清水建設マンション欠陥問題 図面や報告書に誤り続々 法に抵触する公算大きく

大手ゼネコンの清水建設が仙台市中心部で施工したマンションに耐震上必要な緩衝材「構造(耐震)スリット」が1割しか入っていなかった問題で、20年以上前の施工当初から、同社が作成した図面や報告書に誤りが相次いでいたことが12日、河北新報の取材で分かった。安住の地の保証を大手ゼネコン施工の物件に求めた住民は長い間、本当の情報を知ることができなかった。

 [構造スリット] 地震の揺れで建物を損傷させないために柱と壁を構造的に切り離す2~5センチ程度の隙間(スリット)。壁が揺れる力が柱に伝わらないようにするのが目的で、緩衝材の役割を果たす発泡ポリエチレンなどが使われる。防水、耐火、遮音性能も求められる。

 施工段階では、清水建設が建設前に建築確認を取った申請図と、完成後に管理組合に渡した竣工(しゅんこう)図で、スリットの詳細図がすり替わっていた。申請図にはスリットの概念と寸法しか書いていなかった一方で、竣工図には使用する材料や手順などが詳しく書いてあった。

 建築基準法は、建築計画に変更があった場合、届け出を義務付ける一方で、「軽微な変更」の場合は除外している。今回の申請図と竣工図との違いが届け出の対象になるかは微妙だ。

 しかし、実際の工事では図面に記載があった耐震上必要なスリットが1割しか入っていない上、一部は図面と全く違う部材が使われていた。施工不良として法に抵触する公算が大きい。

 完成から10年以内だった2005年には、一部の部屋でカビや結露の発生がひどいとの苦情を受け、清水建設が調査。「スリットにシーリング(気密、防水カバー)がされていないために外部から雨水が内部へ浸透」と報告した。ところが、補修のシーリングをしたとされる場所を今年2、3月に組合側が調査すると、スリットはなく、コンクリートだけだった。

 東日本大震災後の11年6月の調査でも実在しないスリットに対して「損傷は見られませんでした」などと報告していた。

 清水建設の担当者は、図面の違いについて「図面を書いた社員が今はもういないので確定的なことを言えない。一般論として現場に言われた通りに図面を書いたのだと思う」と話した。05年の調査については「きちんとした答えができかねる」と述べた。

被害申告から判明まで20年 「長い間、まともに相手にされなかった」

 「ずっと続いていたもやもやの原因がはっきりした」。清水建設が仙台市中心部で施工したマンションは、構造(耐震)スリットの不足が原因と疑われる被害がたびたび起きていた。6月に清水建設が原因を認めるまで、最初の被害申告から20年がたっていた。

 「もしかすると孫のぜんそくの原因だったのかもしれない」

 ある男性の世帯では2021年秋、北側の部屋に「結露」のような現象が現れ、繰り返し部屋がびしょぬれになった。同居していた息子夫婦と孫が転居した22年4月、部屋の床のカーペットをはがすと、一面がカビだらけで真っ黒になっていた。

 「結露」ではなく、漏水だった。23年7月の清水建設の散水調査で、外壁のひび割れ部分から水が浸入していたことが判明した。ひび割れは、地震が原因と推測された。だが、地震でひび割れが生じる建物の「もろさ」の訳は明らかにされなかった。

 男性は「孫は乳幼児期の2年間、この部屋で過ごした。スリットがちゃんと入っていれば、ひび割れが生じず、大量のカビは発生しなかったはずだ」と憤る。

 男性の部屋は04年にも被害が出ていた。結露が原因とみられる電話線の不良が発生。翌年には外に面した部屋の壁が水分を吸ってもろくなり、カビも発生した。

 清水建設は05年8月、「耐震スリットに防水処置がなかった」と施工不良を認め、11月に改修工事をした。しかし24年2、3月の管理組合側の調査で、その場所にはスリットが入っていなかった事が判明。6月に清水建設も合同調査で事実を認めた。

 男性は「専門的な知識を独学で学んで何度も清水と交渉したが、長い間、まともに相手にされなかった。家は一般の人にとって一生に一度の買い物。今後は誠意ある対応を期待する」と話した。

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