楊麗娟(28)という女性をご存じだろうか? 香港の大スター、劉徳華(アンディ・ラウ)に恋するあまり、父親を自殺させてしまった“恐怖の追明星(追っかけ)”として中国のメディアを騒がせているときの人である。私もミーハーで追っかけ経験ありだが、彼女の行動にはぞっとした。
彼女、学校にも行かず仕事もせず、ひたすら劉徳華を思うこと13年。元教師の父親(77)は娘の「劉徳華に会いたい」という願いを支えるため、甘粛省の家を売り、親類に借金し「腎臓売ってもいい」とまで言って旅費をかき集め、親子3人で香港まで追っかけた。
3月、娘は愛しの君と面会を果たしたが、その翌日、父親は「劉徳華、わが家の悲劇はお前のせいだ」と恨みの遺書を残して自殺。彼女は劉徳華に「父の慰霊に2人っきりで会え」と迫り、これに同情した北京の男性が「彼女と結婚したい」と名乗りを上げるなど悲喜劇ないまぜの香港映画ばりの展開となっている。
人の迷惑も顧みず欲望のままに走る若者、それを許す親、はやすメディア。1人っ子政策の弊害による親の過保護のせいか? 文化大革命などによるモラル崩壊に急激な拝金主義台頭のせい?
そりゃ、日本も人のことは言えない。が、中国人の“溶解っぷり”は弊紙連載「溶けゆく日本人」も及ばない凄みがある。(福島香織)
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