小泉進次郎衆議院議員(38)との結婚を発表したフリーアナウンサー・滝川クリステル(41)が出演するキリンビール「本麒麟」のCMが差し替えになった。公式サイトからは滝川が登場するバージョンを削除し、テレビでのオンエアも取りやめる。降板に伴う賠償請求など、契約上のことについては明らかにされていない。
酒類のCMでは、妊娠や授乳期は飲酒を控えるようテロップで注意喚起しているが、今回の措置は、滝川が妊娠中ということもあって配慮した格好だ。CMは7月から流れているが、滝川は契約途中での降板となる。
タレントのCM契約にあたっては、当然ながら契約書の中に「不祥事を起こさない」という項目が入れられるが、もうひとつ「ステータスを変えない」というものもある。つまり、「立場を変えない」ということである。分かりやすいのは、幸せそうな家族が登場するファミリー向け商品のCMに登場するタレントだ。
よく「芸能界のおしどり夫婦」タレントがいるが、彼らは実生活の仲良し夫婦イメージを広告に反映させることが求められる。これは実際の夫婦共演だけに限らず、どちらかの一人が配偶者以外の芸能人と夫婦役を演じる時も同様だ。だからこそ、「夫婦仲の悪さが報じられないこと」「離婚しないこと」などが、契約時の条項に加えられることもある。それゆえ、本当は夫婦仲が冷え切っていたとしても契約期間中は離婚することはできない。不倫報道などもってのほかである。
だが、こうした「ステータスを変えない」についてはセンシティブにならざるを得ない事情もあるという。広告会社の営業担当はこう語る。
「昔は『契約期間中に子供を産んではいけない』や『恋人発覚報道はダメ』『結婚してはダメ』などを想起させることも契約条項に盛り込んでいました。しかし、契約が人権を上回るという時代ではありません。今回の滝川さんの件は、結婚、出産ともに慶事です。スポンサー企業だからといってそれを基に賠償請求などしたら大バッシングに遭うことは目に見えています。『奴隷契約』なんて言われ方もされかねないでしょう。
キリンの対応は、『妊婦がお酒を飲んでいる』というイメージが広がることは得策ではないという判断からでしょう。妥当な対応だと思います。今後も同様のことが発生した場合、どの企業も『スポンサーとして祝福する』という姿勢を取ることになるはずです。ただし『借り』を作った、ということで今後事務所が何らかの“サービス”的なことをする可能性はあります」
とはいっても、今回の件はスポンサーとしてはいくら慶事であろうとも、滝川の起用を提案してきた広告会社に対し、調査能力の甘さを指摘したくもなるだろう。一方、広告会社としては「そこまで分かるわけない」とも言いたくなる。
こうした想定外の騒動が発生した時、はたしてスポンサーと広告会社、芸能事務所はどのように対応をするのか。基本的にはまず事務所が広告会社に報告し、広告会社とスポンサーが協議する。事務所がその協議に入ることもある。
以前、とある大女優・Aの妊娠が突如事務所からマスコミに発表された時、関係者は大慌てだった。事務所は事前に広告会社にその事実を伝えていたが、対応会議は長時間にわたったという。AはとあるCMで、夫に尽くす妻の役を演じていた。起用の段階では結婚していなかったことで、突然の妊娠により「ふしだら」といったイメージがつくのでは、という懸念が生じたのだ。また、その時点では、お相手の男性の身元がよく分からなかったことも懸念材料だった。
当時の会議では「どんなことが起こり得るか」「結婚前の妊娠がどんなイメージを与えるか」「契約違反ではないか」などを語り合ったようだが、結局は慶事である、という判断をしてAの出演は続行された。
前出の広告会社営業担当者は「傍から見ると臆病でピリピリし過ぎと思われるかもしれませんが、多額のお金をかけ、イメージを良くしようとしているのですから石橋は叩き過ぎても構わないのです。対応を誤ると逆にブランドイメージが低下してしまう危険性を念頭に置きながら対策会議は行います」と語った。