漁船員に若者続々 震災契機ネットPR奏功

気仙沼港(宮城県)を基地とするマグロやカツオなどの遠洋・近海漁船の新規就労乗組員が急増している。長年、後継者不足が深刻だったが、東日本大震災後に インターネットでPRを強化したところ、10代、20代の若者を中心に震災後65人が新規就業した。業界や地域に「金の卵」を大切に育てる機運も高まって いる。

<きつい仕事を>
気仙沼港で4日、遠洋マグロ船「第123勝栄丸」がインド洋に出発し、福岡県久留米市からやってきた乗組員稗田寛平さん(19)は初航海を迎えた。「男の職場が憧れだった。きつい仕事がしたい」
意欲をみなぎらせる若者を、宮城県北部船主協会(気仙沼市)労務部長の吉田鶴男(たづお)さん(45)が「頑張ってこい」と温かく見守っていた。
漁船所有会社でつくる協会が、漁船員募集のために発信しているブログ「漁船員(漁師)になろう」。
「やはり洋上での作業は過酷です。大変です。一番はやる気。強い心が求められます」「あなたを信じています。いつか本当の一人前になれることを」
ブログを担当する吉田さんは、約1年に及ぶ航海で奮闘する若者の奮闘を伝えながら、エールを送り続けている。
きっかけは震災。気仙沼市が注目されている今こそPRに動こうと2012年2月にブログを開設した。「乗組員の知られざる生活がよく分かる」。スマート フォンの普及を追い風にアクセスが急増した。新人乗組員の居住地は、宮城や山形、福岡、神奈川など23都道府県に及んだ。

<メール送り激励>
稗田さんらやってきた若者を吉田さんらは丁寧に面倒をみている。吉田さんは「遠隔地から来る子も多い。一人一人の応援団になっている」と言う。
業界に若者を育てようという機運も高まった。稗田さんを採用した勝倉漁業(気仙沼市)の勝倉宏明社長は「高齢化した乗組員から若者に技術の伝承ができ、若者もすぐ幹部になれる。漁船の仕事を選んでくれた若者は貴重」と話す。
吉田さんは洋上に出た新規乗組員に激励メールを送っているほか、地域紙が新規乗組員を紹介するコーナーを開設。地元団体が「海と生きる」と書かれたTシャツを新人に贈る事業も始まった。
「これまで目指してきた地域ぐるみの乗組員育成に近づいてきた」と吉田さん。かつて数%だった新規乗組員の定着率は震災後、57%(遠洋船は74%)まで上昇した。定着率100%が、吉田さんの大きな目標だ。

タイトルとURLをコピーしました