演出なしのリアルが感動! リアリティ・ショーという番組スタイルが人気

「最近の番組はどれを見てもヤラセばかりだ」「どうせこれも演出だろう」「口パクばかりでガッカリ」――。制作サイドの意図がバレバレの「作られた」番組には、すでに飽き飽きしているという目の肥えた視聴者も多いのではないだろうか。
それに対して、動画共有サイトにアップされた素人の動画の方が、より斬新で、リアリティがあると感じることも少なくない。そんなことを実感させる動画を発見した。
ここ最近、投稿動画サイトのニコニコ動画上で反響を巻き起こしている動画がある。累計視聴者数115万人、300万コメントが集まった伝説の番組、「1000時間生放送!Xperiaだけ生活ー男女7人夢物語ー」から派生した楽曲PV動画、『七色のシンフォニー』がそれだ。
この番組は、俳優の卵やミュージシャンなど、芸能界で活躍したいという夢をもった若者7名がSonyのスマートフォン:Xpriaを片手に古民家で共同生活をし、その様子を1000時間にわたって生放送したものである。メンバーが生放送内で即興演奏した楽曲が、ミュージックビデオとなり、このたび注目を集めているのだ。
そのPV動画の冒頭には、「今でしょ!」ですっかり時の人となった林修氏が登場する一幕も。予備校CM風にPV紹介をするシーンは、生放送番組を見ていなくとも興味も掻き立てられる味な演出だ。
ところで、素人の生活を1000時間も演出なしで放映したにも関わらず、なぜここまで多くの視聴者数とコメント数を集めることができたのだろうか。その背景には、素人特有のリアルさが視聴者に共感と感動を生んだことがある。
こうした番組形態は「リアリティ・ショー/リアリティ番組」と呼ばれる。リアリティ・ショーとは、素人の出演者たちに立ちはだかる困難や体験を、そのままストーリーとして放映する番組を言い、「台本やヤラセがない」ということを売りにしている。従来、番組とは、制作側から視聴者へ、という一方通行の関係が主流であったが、視聴者参加型という形態をとることで今までにない「双方向性」の獲得に成功した。
起源は、1948年に放映された「どっきり番組」の元祖、アラン・フントの「キャンディード・カメラ」にまでさかのぼると言われる。脚本や演出に頼らず、素人のリアクションの味を生かすという手法が斬新だった。完全に素人に焦点をあてたリアリティ・ショーが世界的に放映されはじめたのは、1990年代に入ってからのことだそう。
 
日本では、「進め!電波少年」(日テレ系)や「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」(日テレ系)などがその先駆。「あいのり」(フジテレビ系)や「しあわせ家族計画」(TBS系)、最近では、ひとつ屋根の下のシェアハウスで夢を追う素人男女の友情や恋模様を描いた、「テラスハウス」(フジテレビ系)などもリアリティ・ショーといえるだろう。
「作られた」ものよりも、彼ら目線で撮影される映像と荒削りなリアルがドラマチックさを生み、思わず感情移入してしまう。これがリアリティ・ショーの醍醐味なのだ。
さて、ニコニコ動画上のリアリティ・ショーから生まれた楽曲PV、『七色のシンフォニー』も、おなじく共感や感動の声を集めている。日常生活の中から鼻歌のような即興から誕生した歌がミュージックビデオになったということで、生放送を楽しんでいたファンには思い入れが強い作品になっているようだ。
この楽曲を歌うのは、歌手になりたいという夢を持ち、番組中は、「姉御」「姉さん」と呼ばれ生放送視聴者に親しまれていた女性だ。楽曲映像には、「歌っている姉御は輝いているな」「姉さん良い声じゃん!」「神曲キタ!CDでないかな?」といったコメントが多く寄せられていることからも、人気が伺える。
寝ている間もずっと撮影されっぱなしの1000時間の生放送から生まれたこの楽曲。ミュージックビデオには視聴者のコメントからヒントや勇気を得て、皆思い思いの夢を叶えることができたというストーリーが込められている。従来の番組制作スタイルではでき得なかった双方向性による感動は、ぜひあなたの目でも見てみてほしい。

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