<言語の垣根を越えたメディア出現>
写真を漫画風に加工する「漫画カメラ」をご存じか? iPhone用の「アプリ」で、撮った写真を一瞬にしてマンガチックに変えてしまう。気に入った一枚を簡単に「フェイスブック」や「ツイッター」に投稿できる手軽さもiPhoneユーザーにバカ受けで、アプリ公開から1カ月弱で300万ダウンロード(DL)を突破する大ヒットとなっている。
このアプリを製作したのは大阪に本社を構える「スーパーソフトウエア」。創業は1983年、主に航空・鉄道の予約発券機のシステム開発をサポートしてきた会社だ。今回のプロジェクトは、創業者の35歳の息子が代表を務める同社の「東京オフィス」を中心に進めているが、気になるのはこのアプリ、まったくの無料配信ということ。
「タダだったら、いくらユーザーが増えても儲からないのでは」という発想はもう古い。「これだけのユーザーを抱えれば、稼げる方法は無限に見つかる」と、ITジャーナリストの井上トシユキ氏はこう言う。
「ユーザーが画像を投稿し合うコミュニティーをつくれば、ミクシィやフェイスブックのように既存のSNSのようなビジネス展開が可能ですし、何より大企業が放っておきません。すでに著名な漫画家とのコラボレーション企画を考えているようですが、コンビニや飲料メーカーなどとのキャンペーンと連動すれば、莫大な広告費を稼げます。しかも、このアプリを楽しむのに、言葉は必要ありません。現に欧米、アジア諸国からのDL数は増加の一途。世界の名だたる企業とのタイアップも可能でしょう。いわば、言語の垣根を越えた巨大メディアが突然、現れたようなものです」
300万というDL数は、日経新聞の発行部数と同じ。1000万部を誇る読売新聞の発行部数をDL数が抜くのも時間の問題かもしれない。大マスコミもウカウカしていれば、広告費をかっさらわれて立ち往生――。もう、そんな時代に突入しているのだ。
(日刊ゲンダイ2012年11月5日掲載)