瀬戸内海で、船舶の居眠り事故が相次いでいる。穏やかな海域だが、島々が多く、潮流が速い「難所」もあり、少しの居眠りでも衝突や座礁の事故につながる。第6管区海上保安本部(広島市)の管内では、10年間に68隻の事故が発生し、全国的に突出している。高松海上保安部は、海運事業者らへの注意を呼びかけている。(尾崎達哉)
海上保安庁の統計では、2013~22年に全国11管区で居眠りが原因の海難事故に関係するタンカーや貨物船などの船舶は129隻あり、このうち6管管内は68隻と全管区で最も多く、5割超を占めた。
6管によると、発生場所は、大小様々な島が集まる備讃瀬戸などが目立った。発生時間帯では68隻のうち59隻については、午後9時から午前6時までに集中。乗組員が休憩をとるため当直の1人が操舵(そうだ)することが影響している。決まった針路に走らせる自動操舵装置の使用も眠気の原因になるという。
香川県内では10年間に12隻の事故があった。多度津町沖で21年12月に貨物船が前方の漁船に衝突した事故では、国の運輸安全委員会の船舶事故調査報告書が、「夜間に貨物船の船長が居眠りに陥り、航行を続けたと考えられる」と指摘した。
高松海保は、10日までの「居眠り海難防止運動」に合わせて、船舶の所有者や運航会社に啓発のポスターやパンフレットを配布した。
事故防止策として、自動操舵装置の使用中でも周囲への見張りを適切に行うことや、長時間労働を避けて無理のない運航計画の策定などを求めている。
高松海保の豊田幹広次長は「瀬戸内海は狭い海路を多くの船舶が往来するので、航行には注意が必要」とし、「こまめに針路を変えたり、座るのではなく立って操舵したりするなど対策を取ってほしい」としている。