東日本大震災の教訓や災害への備えを学び、発信する中学生対象の「かほく防災記者研修」(河北新報社主催)第4期が26日、始まった。第1回研修は仙台市青葉区の河北新報社であり、登録した宮城県内の中学生19人のうち14人が参加。事前に家族の被災体験を取材し、執筆した原稿を発表したほか、公益社団法人3・11メモリアルネットワークの語り部阿部任(じん)さん(29)の話を聞いた。
阿部さんは震災発生直後、宮城県石巻市で祖母と家ごと津波に流され、9日後に救出された。「地震の後、防災無線は津波が来ると伝えていたが、海から900メートル離れた自宅までは来ないと思い込み、2階に避難した」と振り返った。
自宅に閉じ込められていた間、「食料は冷蔵庫のものを少しずつ食べた。圧縮袋に入っていた布団はぬれておらず、祖母に渡した」と説明。「寒さで足は凍傷になり、痛みの感覚がなくなった」とも語った。
救出時の報道について「避難しなかったことを怒られると思ったが、ヒーロー扱いされて悩んだ」と心境を明かす一方、自らの教訓を踏まえて「皆さんには災害を自分ごととして考え、思い込みをなくして身を守る行動をとってほしい」と呼びかけた。
調べ学習のテーマは震災や2019年の台風19号豪雨が多く、「(震災の津波で)母の実家に止めていた2台の車が流された」「大雨で祖父母の家は1階が水没した」などと報告。備蓄や避難ルールといった家庭での備えに関する発表もあった。
中学生は12月までに4回の研修を受けるほか、家族との避難訓練に挑戦したり、原稿を執筆したりする。