東日本大震災で被災した石巻市の仮設住宅などで車の共同利用事業を展開する一般社団法人「日本カーシェアリング協会」が、整備が進む災害公営住宅で新たな事業を計画している。電気自動車(EV)を導入し、太陽光発電の活用で防災機能も高める。事業は石巻仮設住宅自治連合推進会と連携し、市に協力を求めている。
計画によると、「石巻エコEVカーシェアリング事業」は市内5~10カ所の災害公営住宅団地に太陽光発電設備とEVを配置する。普段は太陽光発電でEVを充電し、住民が共同利用。非常時はEVから電気を供給できる仕組みを整える。
協会は今秋、推進会や学識経験者、企業などで検討委員会を設立し、実現化の協議に着手する。モデル地区を選定し、来春には実証実験を始める方針。
協会の吉沢武彦代表理事と推進会の山崎信哉名誉会長は9月末、市役所を訪れ、笹野健副市長に要望書を提出した。災害公営住宅集会所への太陽光発電パネルの設置許可や、検討委への参加を要請。笹野副市長は「今後、具体的な指導をしていただきたい」と前向きな姿勢を見せた。
協会は2011年7月から市内の仮設住宅の住民が協力して車を管理することで、移動手段の確保とともに震災で失われたコミュニティーの再構築を図る事業に取り組んできた。
吉沢代表理事は「高齢化社会への対応として交通弱者を支援するだけではなく、震災の経験を踏まえたエネルギーの自給自足を進め、他の地域に役立つモデルをつくりたい」と意欲を示した。