災害情報を瞬時に発信するツイッターアカウント「特務機関NERV(ネルフ)」を運営する東京のIT会社「ゲヒルン」が、人気アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のデザインで災害情報を通知する防災アプリを開発し、利用者が増えている。社長は石巻市出身の石森大貴さん(29)。モチーフはアニメだが性能面の評価も高い。東日本大震災の経験を基に「正確で最速の情報伝達」に取り組む。
アプリ名は「特務機関NERV防災」。石森さんがエヴァの大ファンで、実際に登場する組織名を著作権者の許諾を得て使用している。作中でネルフが「使徒」と呼ばれる敵の襲来を告げるように、災害発生を速報してくれる。
2019年9月に米アップルの基本ソフト(OS)「iOS」対応スマホ向けに提供し、ダウンロード数は3カ月で40万を突破した。12月には米グーグルのOS「アンドロイド」にも対応した。
地震や噴火、津波、大雨など気象庁から提供されるデータを独自のプログラムで瞬時に利用者が見られる形式に変えて発信。その技術は他社にも提供されているほどだ。
石森さんは大学生だった11年の東日本大震災で石巻市内の実家が全壊、親戚や知人が犠牲となったのを機に「災害、防災情報を一秒でも早く伝えられるように」と発信の取り組みを本格化させた。
災害の危険度は場所によって異なるため、利用者の位置情報とリンクして最適な情報を伝えられるアプリにした。色覚障害でも見やすい配色や音声読み上げ機能など、情報を確実に届けるための工夫も凝らしている。
「災害情報はあくまでも命を守る行動のための判断材料」と石森さん。「アプリを通じて一人一人が災害と向き合い、防災意識を高めてほしい」と願っている。