無人ギョーザ「閉店ラッシュ」が止まらない…!それでも“オワコン化”とは言い切れない理由

大手「餃子の雪松」にも異変

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 新型コロナウイルス禍は、新しいビジネスモデルを生み出す契機となった。その中にあって、特に目を見張る急成長を遂げたものが、ギョーザの無人販売店だろう。 【閲覧注意】茨城県畜産センターで牛たちが受けていた衝撃の飼育状況の数々…  店内備え付けの冷凍ケースから顧客が商品を取り出し、店内に設置された料金箱に現金を入れる。こうした無人販売スタイルは、時として窃盗事件なども相次いで報じられたが、人との接触を避けられるとあって、コロナ禍を機にすっかり定着した。  ところがここへきて、全国で「閉店ラッシュ」が起きているという。  たとえば、ギョーザ無人販売店で最もシェアが大きい「餃子の雪松」(運営:株式会社YES)はどうか。同ブランドは2019年7月に無人店舗で冷凍餃子の販売をスタート。群馬県水上にある食事処「雪松」人気の味を再現した餃子は、「冷凍とは思えない美味しさ」との評判だった。  その結果、コロナ禍真っ只中の’22年には、全国400ヵ所以上への出店を実現。また、「’23年内に1000ヵ所を目指す」という経営陣の声も注目を集めた。  ところが、同社の公式HPを調べたところ、’24年6月時点の店舗数は、374店舗にとどまっている。すでにピーク期の10%ほどが、閉店を余儀なくされたというわけだ。  当然、全国シェアの大半を占める大手ブランドがこうである以上、他のブランドも閉店、そうでなくても苦境を強いられている状況は容易に想像できる。なぜ、ギョーザ無人販売店はここへきて「閉店ラッシュ」に追い込まれているのか。

参入障壁が低すぎたがために

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 「’24年現在、ギョーザの無人販売市場はすでに飽和状態にあり、ピーク期をすぎて、今は事業を整理するタイミングにきているのではないか」と語るのは、株式会社帝国データバンク情報統括部の飯島大介氏だ。  「私共の調査では、’20年度末にわずか131店にしか満たなかったギョーザ無人販売店は、’22年には1282店と、実に3年間で約10倍もの急拡大を見せました。また、ギョーザの無人販売事業に進出した企業も、『’21年度中』が最も多かったように、まさにコロナ禍で爆発的に増えたビジネスの代表格と言えるでしょう。  ところが、’23年の店舗数は約1400店と、すでに出店ペースは鈍化の傾向を見せていました。店舗の閉鎖や事業の断念といった動きも散見されており、今年は鈍化傾向から減少傾向に入ると予想されます」  そもそもなぜコロナ禍にあって、数ある冷凍食品の無人販売店の中でも「ギョーザ」だけがここまで急拡大を遂げたのか。ポイントとなったのは、〈参入障壁の低さ〉だ。飯島氏が続ける。  「まず前提として、コロナ禍を機にテイクアウト(持ち帰り)が普及したことが大きい。その上で、駐車場の中など省スペースでも出店可能でかつ出店費用も最も安いもので300万円からと、飲食業態としては非常に低いんです。また、無人なので人件費を抑えられ、かつ24時間営業も可能。総合して、セカンドビジネスとしてうってつけだったわけです」  事実、中華料理店や冷凍食品メーカーが参入したケース以外に、駐車場運営やクリーニング店など、他業種からの参入も多く見られた。

高級食パンと同じ道を辿るのか?

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 さらに〈餃子そのものの消費者人気〉も急拡大を支えた一因だ、  「巣ごもり下、一度に何十個も『まとめ買い』できる要素は消費者にとって大きかったと考えられます。調理が簡単な日常食で、価格設定も1個20円~とリーズナブル。また、他の冷凍食品にはない、家族や友人といった大人数でワイワイと食べられる特徴が、消費者に広く受け容れられたのでしょう」(飯島氏)  だが、その結果、ギョーザの無人販売店は予想以上に“増えすぎて”しまった。アフターコロナを迎えた今、出店すれば儲かる、という状況は失われた。無人販売という「目新しさ」にしても、スイーツや野菜、肉など、日々新しい無人販売店にお株を奪われてしまった形だ。  思い返せば、’19年頃に起こった「高級食パン」ブームも、一時は全国に専門店がひっきりなしにオープンし、連日行列ができる繁盛店もあったが、わずか数年の間に“オワコン”化。大部分が閉店を余儀なくされてしまった。  このままギョーザの無人販売店は、高級食パンと同じ道を辿るのか――。そう思いきや、飯島氏の考えは少し違うようだ。  「閉店が相次ぐ今の状況は、おそらく『儲かる店舗』と『儲からない店舗』を仕分けているフェーズを示しているのだと思います。冷凍食品の需要は高いままですし、高級食パンやタピオカ、白いたい焼きといった一過性のブーム食と違い、餃子はあくまで“日常食”。普段食べるモノである以上、そこまでニーズが急落するとは思えません。  ただ、これから5年、10年後、ギョーザに取って代わるような冷凍の“日常食”が生まれる可能性は否定できない。その時こそ、生き残りの分かれ目となるでしょう」  ギョーザの無人販売店の真価が問われるのは、ブームが一服したこれからだ。

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