焦点 道の駅、防災にも一役 避難所・トイレ・情報発信

地域交流や観光の拠点として幹線道路沿いに立つ東北の「道の駅」=?=で、防災機能を整備する動きが広がっている。東日本大震災時に多くの住民が集まり、避難所となった一方、停電や断水でトイレの利用や道路情報の発信ができなくなるなど反省を残した。「地域に役立ち信頼される施設でありたい」と各駅は教訓を生かし、災害への備えを強める。(田柳暁)
◎東北、教訓生かし機能強化
<1階は柱だけ>
 太平洋沿いを走る国道6号に面するいわき市の道の駅「よつくら港」。津波で全壊し、ことし8月のオープンに向けて再建のつち音が響く。
 漁業資材を置く木造平屋の番屋を改装した施設だったが、津波は天井まで達した。ヤマト福祉財団(東京)から1億8000万円の助成を受け、津波に強い構造の施設に造り替える。
 一部3階建ての鉄骨造りで、1階は壁がなく柱だけの構造にする。道の駅を管理するNPO法人「よつくらぶ」は「津波が来ても通り抜け、津波から受ける力が弱まる」と説明する。
 従来より70センチ盛り土し、震災と同程度の7メートル前後の津波ならば耐えられるという。貯水槽や太陽電池を備えてライフラインを確保し、2階に資材庫を設け災害時に必要な物資も備蓄する。
 白土健二駅長(49)は「高台への避難が第一だが、逃げ遅れた人が駆け込める。建物が残れば、復旧も早い」と話す。
 東北6県にある道の駅は140カ所。「よつくら港」に加え、「みやこ」(宮古市)、「高田松原」(陸前高田市)、「大谷海岸」(気仙沼市)の計4カ所が津波で大きな被害を受けた。「ならは」(福島県楢葉町)は福島第1原発事故で立ち入りできない。
<住民が続々と>
 道の駅に詳しい松本祐一多摩大准教授(地域経営論)が東北の全施設に実施した調査によると、震災時に75%が停電した。電話不通は65%に上り、断水も30%を超えた。貯水槽や発電機を備えた施設もあったが、多くの駅でトイレの利用や交通情報の提供など基本的な機能を果たすことができなかった。
 石巻市北部の内陸にある道の駅「上品の郷」もその一つ。震災当日の夜は、沿岸部や市中心部の住民の車300台が駐車場を埋め尽くした。
 多くの人が、通行できる道路の情報や被災地の状況を求めていた。が、情報源は太陽電池を備えた施設にあったテレビ1台だけで、電話もつながらない。停電でトイレも使えなかった。
 「必要な情報を提供できなかった」と太田実駅長(70)は振り返る。
 地場野菜の直売は直後から再開。温浴施設「ふたごの湯」も13日後から始め、食料や入浴などの需要に応えた。
 本年度は、国の震災関連の補助事業を活用して簡易トイレや貯水槽を整備する。太田駅長は「住民のニーズに応える責務がある」と防災や情報発信の機能強化の必要性を強調する。
 松本准教授は「生産者や行政と日頃から連携を強めることが大切だ」と指摘する。
[道の駅]ドライバーに休憩の場を提供したり、道路・観光情報を発信したりする機能のほか、産直の場など地域連携機能も主な要件。24時間利用できる駐車場やトイレを備える。集客・販売施設は第三セクターやNPO法人、民間企業が運営主体となる例が多く、国が認定する。

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