喫煙者にとって「一服」は至福のひと時。しかし、その健康被害、さらには受動喫煙による健康への悪影響は、今や常識となっている。
こうした望まない受動喫煙で困っている人を救うため、2018年に健康増進法が改正され、受動喫煙対策が強化された。「最近、屋内で喫煙所を見かけなくなった」と感じる人も多いと思うが、これはまさに法改正により、多くの施設で原則として屋内の禁煙が義務付けられたためだ。筆者の勤務する首相官邸の屋内喫煙室も、去る7月に全面廃止された。こうした受動喫煙対策は段階的に強められ、来年4月に全面施行される。
そこで、政府は受動喫煙対策の土台として、現在の世論の状況をしっかりと把握するため、初となる「たばこ対策に関する世論調査」を行った。
「たばこの煙は不快」約8割!
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調査において、まず、たばこの健康被害に関して知っていることを複数回答で問うたところ、「肺がんの原因となる」(85.2%)「周りの人の健康にも悪影響を及ぼす」(72.0%)「脳卒中や心筋梗塞、肺気腫などの病院の原因となる」(66.8%)ことなどについて、認知度が高かった。
そのうえで、「周りの人のたばこの煙の印象」を訪ねると、「不快に思う」と「どちらかといえば不快に思う」という人を合わせた割合は78.4%にのぼった。男女別の内訳をみると女性は86.4%、男性は69.5%で、女性の方がたばこの煙を不快に感じる割合が高いという結果が出た。
また、たばこの煙を不快に感じたことのある場所を複数回答で聞いたところ、「食堂・レストランなど食事を提供する店舗」(62.4%)「路上」(53.3%)の上位2項目が抜きん出て多かった。
こうした受動喫煙を防ぐため、政府に要望することとしては、「分煙の促進」(72.6%)「飲食店の禁煙推進」(60.6%)などが上位を占めた。
屋内喫煙所には標識設置義務!政府対応の認知度に課題も
© FNN.jpプライムオンライン ステッカーを貼る飲食店スタッフ(東京・渋谷区)
前述の通り、政府はこうした受動喫煙対策を強化すべく、健康増進法の改正を行ったが、この法改正の内容を知っているかも調査した。結果は、「多数の人が利用する施設の屋内は原則禁煙となる」(46.0%)「病院・学校などの施設では他の施設よりも規則が厳しく、屋内に喫煙室が設置できない」(44.6%)ことなどが比較的高い認知度となったが、50%に満たなかった。
一方で「違反者への罰則が設けられた」(10.9%)、「たばこが吸える場所に20歳未満の博は立ち入れなくなる」(9.6%)ことなどへの認知は1割前後にとどまっていて、来年4月の全面施行に向け、内容の周知をさらに図っていくことが課題であると感じる。
ただ、健康増進法改正により、施設の中に喫煙室がある場合には、施設の出入口および喫煙室の出入口に、施設の種類に応じた標識を掲示することが義務化される。そのため、政府関係者は「こうした標識に触れる機会が増えることで、受動喫煙対策への意識が浸透することを期待する」と語る。
© FNN.jpプライムオンライン (喫煙設備に関する標識の一覧:政府広報オンラインより)
また、たばこ対策に関し政府に力を入れてほしいことを複数回答で聞いた設問では、「未成年者に対するたばこの健康被害に関する教育の充実」(41.8%)、「受動喫煙対策の強化」(41.7%)、「たばこ税の引き上げ」(32.2%)が上位を占めた。政府は今回の世論調査の結果を、専門家の意見も伺いながら、今後の施策の参考にする方針だ。
がん治療と仕事の両立は
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政府は、今回の「たばこ対策に関する世論調査」とあわせて、おおむね3年に1回実施している「がん対策に関する世論調査」の結果も公表した。
「がんが怖いと思う」人の割合(71.8%)や、その理由(「死に至る場合があるから」が73.1%で最多)は前回調査と大きく変わっていないが、一つ大きく結果が変わった調査項目がある。
それは、「仕事と治療等の両立」についての項目だ。
「現在の日本の社会では、がんの治療や検査のために2週間に一度程度病院に通う必要がある場合、働き続けられる環境だと思うか」と尋ねたところ、「働き続けられる環境だと思う」と答えた人の割合が、前回調査比+9.2ポイント上昇した(2016年27.9%→2019年37.1%)。政府の担当者は「一概には言えないものの、働き方改革が進み治療に必要な休みが取りやすくなったあらわれではないか」と分析する。
もちろん「そう思わない」と答える人の割合は、減少したものの依然として高い(2016年64.5%→2019年57.4%)。しかし、こうして「がん治療しながら働き続けられる」と思える人の割合を伸ばしていくことが大事で、新たな治療法の確立に加え、働き方の観点からも、仕事しながら治療ができるような環境整備が求められると思う。今回の調査結果がどのように政策の立案や遂行に役立てられるか、注目していきたい。
(フジテレビ政治部 首相官邸担当 山田勇)