東北電力は一部の家庭向け電気料金の契約者に対し、実質的な値上げとなる燃料費調整制度の転嫁上限の撤廃に関するダイレクトメールを送り、周知を進めている。料金がどれだけ上がるかは燃料価格次第で、現在の価格水準が続けば値上げ幅は20%を超える可能性もある。
[燃料費調整制度の転嫁上限の撤廃]燃調制度は輸入燃料の価格変動を電気料金に反映する仕組み。過去3カ月の平均燃料価格から調整単価を算定し、2カ月後の料金に適用する。東北電は家庭向け電気料金に転嫁上限を設けているが、6月分の電気料金が初めて上限に達して以降も燃料価格の高騰が続き、料金に転嫁できない燃料費の自社負担が過大になった。そのため12月分から一部で上限の撤廃を決めた。
転嫁上限がなくなるのは2016年の電力小売り全面自由後に設定した「自由料金プラン」の157万件。主な料金プランは表の通りで、オール電化住宅が主に利用する夜間の料金が安いプランなどが該当する。自由料金プランは国の認可を経ずに事業者が自由に変更できる。
東北電は8月29日、対象者にダイレクトメールの発送を始めた。ただ、肝心の値上がり幅に関しては「燃料価格の高騰が続いた場合には負担増加が見込まれる」としか記載がない。上限撤廃の最初の月となる12月分の料金算定に必要な7~9月の平均燃料価格のデータがまだないためだ。
月ごとの平均燃料価格はグラフの通り。7月は速報値で初めて8万円を超えた。8、9月も同水準と仮定し、7~9月の平均燃料価格を8万円として試算すると、標準家庭(契約電流30アンペア、使用電力量260キロワット時)の料金は上限額から1889円増の1万399円。値上げ幅は約22%になる。
東北電は7月29日に上限撤廃の方針を公表した際、9月分の電気料金(4~6月の平均燃料価格を反映)で仮に転嫁上限をなくしたとすると、約13%の値上げになると説明していた。燃料価格はその後も上昇し、値上げ幅は拡大している。
家庭や店舗向けの料金プランのうち、変更に国の認可がいる「規制料金プラン」の531万件は転嫁上限を維持する。そのため、自由料金の上限を撤廃しても、現在1カ月で十数億円に上っている燃料費の「赤字」の約2割しか回収できないという。
経済産業省の電力・ガス基本政策小委員会は7月、今後の小売り政策に関する中間取りまとめで「コストの変動をより適切に反映する」ための考え方を整理、公表した。東北電はこうした動向を踏まえ、規制料金の見直しも「将来的には議論する」と説明する。
企業向けの電気料金は全て自由料金プランで、転嫁上限は設けられていない。東北電は11月1日以降の契約更新分から基本料金と単価を改定し、モデルケースで約16~18%の値上げを決めている。