爆音響かぬEVマシンに疑問の声も 「フォーミュラE」若者の心つかめるか

2014年からスタートする電気自動車(EV)によるレースシリーズ「Formula E(フォーミュラE)」のマシンが12日、ロンドンでお披露目された。主催団体ではレースを通じてクルマ離れが目立つ若者たちにEVの魅力をアピールし、スローペースが続く市販EVの普及を加速させたい考えだ。「エキゾーストノート」(排気音)がとどろかない電気駆動マシンによるレースは、都心部の公道での開催などモータースポーツの新たな可能性を開く一方で、ファンをどこまで興奮させることができるのかと疑問視する声もある。
 「電気自動車が走るので、F1レースと違って耳をつんざくような爆音が出ないから、家族で気楽に楽しめる。激しいチケット争奪戦もないから、F1より安く観戦できる」。ロンドンで会見を開いた主催団体フォーミュラEホールディングスのアレハンドロ・アガグCEO(43)は、EVレースの魅力をこう強調した。
 ロイター通信などによると、レースシリーズは、来年9月に北京で開幕し、15年6月のロンドンでの最終戦まで全10戦が行われる。開催都市はローマ、ベルリン、ロサンゼルス、リオデジャネイロ、バンコクなど。初年度は10チームでスタートし、翌年から14チームに拡大する計画だ。今月1日に参戦が発表された元F1ドライバーの鈴木亜久里氏(53)率いる「スーパーアグリ・フォーミュラE」を含め、すでに6チームが決まっている。
 レースは約1時間で、ドライバーは1チーム2人。現在搭載しているバッテリーの性能では15~20分しか走行できないため、2回のピットストップを行い、マシンごと交代する。シリーズ開催の最大の狙いは、次世代エコカーの本命といわれながら、1回の充電で走行できる距離や充電スタンドの不備などで販売台数が伸び悩んでいるEVの普及に弾みをつけることだ。アガグ氏は、スペインの起業家らとともにEV事業に総額1億ドル(約99億円)を投資しており「今後25年間の販売台数は全世界で7700万台に上る」と、もくろんでいる。
 ところが、米市場調査会社ABIによると、今年の世界販売は15万台にとどまる見込みで、毎年50%増の伸びで増え続けても、2020年の市場規模は230万台にすぎない。「不格好でクールじゃないとの理由で人々はEVの購入に二の足を踏んでいる。だから普及はいまだスローペースだ」と、アガグ氏も頭を抱える。
 最大の障害が若者のクルマ離れだ。アガグ氏は英紙フィナンシャル・タイムズに対し、「10~16歳の世代はフェラーリよりスマホをほしがる」と嘆いた。そこで、こうした世代にEVの魅力を伝えるため、スマホやタブレット端末でレースの模様をリアルタイム観戦できるようにするという。
 アガグ氏は「あらゆるテクノロジーが試され、発展する場にしたい」と、環境技術の進歩に貢献する考えも示す。これに対し、あるモータージャーナリストは課題を指摘した。「環境に優しいだけでは若者を魅了できない。モータースポーツの興奮や走る楽しさをどう伝えていくかが重要だ」(SANKEI EXPRESS)

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