牛肉相次ぎ出荷停止 「いつ再開」「補償は」 関西のスーパーで買い控え

 「まったく先が見えない」―。28日、福島県に続き出荷停止が決まった宮城県の肉用牛。同県内の畜産農家からは、今後の経営への不安の声が相次いだほか、関西のスーパーでも買い控えなど風評被害への心配の声が聞かれた。
エサ代、従業員の給与ホルスタイン農家「先見えぬ」
 登米市で肉用牛4千頭を肥育する「日高見畜産」社長、佐藤寿男さん(63)は、準備していた牛1頭の処理をあわてて取りやめた。「全頭検査が始まるから、出荷の本格再開の準備をしていたのに…」
 出荷停止は、経営に重くのしかかる。出荷が遅れるほど、暑さに弱い牛が死ぬリスクが高まる。堆肥の出荷も制限され、牛の糞尿(ふんにょう)もたまる。エサ代がかさみ、従業員の給与もある。
 「出荷停止は、補償が明確になる」と期待もかけるが、「いつ再開するのか、どこまで補償されるのか。まったく先が見えない」と疲れた様子だ。
 同市で肉用牛100頭を育てる千葉正ファーム代表、千葉正一さん(61)は「行政の対応が遅れるほどコストがかさむ。最初から出荷停止にすればよかった」と批判した。
 一方、消費者に提供する側のスーパーなども深刻だ。阪神間で60店舗を展開する関西スーパーマーケット(兵庫県伊丹市)は、宮崎など西日本5県の指定牧場から牛肉を仕入れ、出荷停止は直接影響しないが、広報担当者は「牛肉自体の売り上げが数%減っており、回復の見通しはたたない」と話す。
 京阪神で23店舗を営業するいかりスーパーマーケット(兵庫県尼崎市)も宮城県産牛の取り扱いはないが、同社畜産部の住山肇部長(55)は「牛肉の買い控えが目立ち、売り上げは2週間ほどで約4割減った。風評被害をもろに受けている」。
 農林水産省によると、平成21年の出荷頭数は福島、宮城両県に、出荷停止検討中の岩手県を加えても全国に占める割合は約8%。しかし、量の不足よりも国産牛自体への敬遠が深刻だ。
 経済ジャーナリストの荻原博子氏は「国産牛が売れなければ価格は下がる。消費者の選択は米国産や豪州産に偏っていくだろう」と話している。

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