カンボジアを拠点にしていた日本の特殊詐欺グループの男19人が現地当局に拘束され、警視庁が6日、詐欺容疑で逮捕状を取ったことが捜査関係者への取材でわかった。「有料サイトの未払い料金がある」と偽り、電子マネーを詐取する手口だった。警視庁は近く捜査員を現地に派遣して身柄の引き渡しを受け、日本に移送して逮捕する方針だ。 【写真】男たちがザコ寝…「ルフィ」らが拘束されていたマニラ近郊の収容所
捜査関係者によると、発端は1月中旬、「日本の詐欺グループがホテルを拠点にしている」との情報が現地の日本大使館に寄せられたことだった。
大使館から連絡を受けた現地警察が同月下旬、首都プノンペンから約180キロ離れた同国南部シアヌークビル州のリゾートホテルを捜索し、日本人の男19人の身柄を確保した。
19人は20~50歳代で、取り調べに「観光目的で入国した」などと説明したという。だが、借りていた客室のうち、事務所として使っていたとみられる客室からは、大量の携帯電話や複数のパソコンのほか、詐欺の手口が書かれたマニュアルなどが見つかった。
警視庁が調べたところ、NTTドコモを装って日本の携帯電話にショートメールを送りつけ、メールに記載した番号に電話をかけてきた被害者に「有料サイトの未払い料金がある」とうそを言い、電子マネーを購入させる手口だった。
被害者がかけた電話番号と、カンボジア当局が押収した携帯電話のラベルに記載されていた番号が一致したという。
逮捕状の容疑は、1月下旬、東京都内の60歳代女性から約25万円相当の電子マネー「ビットキャッシュ」をだまし取った疑い。
19人は現在、現地の警察施設内に収容されているとみられる。警視庁は今後、現地当局にも協力を求めながら、詐欺グループの実態解明を進める。
警察庁によると、有料サイトの未払い料金名目を含む架空請求詐欺の被害額は昨年、全国で約100億円に上った。19人が拘束された後の今年2月も各地で約11億円の被害が出ており、同様の手口を用いる詐欺グループがほかにも存在するとみられる。 特殊詐欺事件では近年、警察による摘発を逃れるため拠点を海外に移す動きが目立ち、中国やタイ、フィリピンで日本人グループが摘発されている。カンボジアでの摘発は初とみられ、警察当局は詐欺組織がアジア各地に拠点を広げているとみて警戒している。