平成28年にも家庭への電力小売りが自由化されることを見据え、経済産業省に「新電力」として電力事業への参入を届け出た企業がこの1年間で2・6倍に急増し、200社を突破したことが7日、分かった。全国で約7・5兆円、首都圏だけでも約2・6兆円に上るとされる、巨大な家庭向け電力の自由化市場(商店なども含む)を狙う企業戦略が早くも活発化しており、都市ガスや通信、外食など業種を超えた合従連衡も加速しそうだ。
「大きなビジネスチャンス。小売りに特化した総合エネルギー企業を目指す」
意欲満々に語るのはプロパンガス小売り最大手、日本瓦斯の和田真治社長だ。
同社は、宅配水で全国首位の「アクアクララ」を展開する企業と事業統合を視野に業務提携を交渉中。和田社長は「電気やガス、水、通信、保険などさまざまな家庭向けサービスをパッケージ化して販売したい」と意気込む。
東京ガスや大阪ガス、JX日鉱日石エネルギーも4月に電力の専門部署を設置した。各社は総合エネルギー企業へと脱皮するため、家庭向け電力小売りへの参入を本格検討する。
エネルギー企業のみならず、異業種も巨大市場を虎視眈々と狙う。
通信大手のソフトバンクは今春にも企業向けの電力小売りに参入。家庭向け市場が開放されれば、携帯電話との併売なども検討する。ワタミも5月からグループの外食店などに電気を供給し、家庭向けも視野に入れる。
昨年5月末に82社だった新電力は同年末に126社、5月7日時点で215社と急増。トヨタ自動車やパナソニックなど大手メーカーも本体や関連会社で新電力に登録している。
一方、工場などの大口契約に続き、家庭向けの自由化で顧客離れが進むことを懸念する大手電力は、供給エリアをまたぐ競争に乗り出した。
既に関西電力と中部電力は、首都圏での電力小売りに参入。関電は子会社を通じオフィスビルなど十数件に供給。中部電は昨年10月に新電力のダイヤモンドパワー(東京都)を買収し、25年度の販売電力量は前年度比5%増の約4億キロワット時と伸びてきた。東電もエリア外の電力供給に参入し、域外で3年後に340億円の販売を目指す。
経産省によると、自由化される家庭向け市場は首都圏を抱える東京電力管内が約3分の1を占めが、関西や中京圏など大都市を中心に全国に広がっている。
今後、販売する電力を確保するため、他社と手を結んで発電所を建設したり、大手電力が異業種の発電所から電力を購入するなど市場争奪戦に備えた態勢づくりが本格化しそうだ。