狭小戸建てで独走するオープンハウスの正体

 高騰続く新築マンション。東京都区部での平均価格は2017年に7000万円を突破した。お隣の神奈川県でも上昇が続く。このためマンション購入希望者が、戸建ての購入も検討するという希有な状況が続く。

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 その潮流に乗って成長を遂げているのが「東京に、家を持とう。」のキャッチフレーズで一躍、知名度を上げたオープンハウスだ。同社の建売価格は土地付きで平均4400万円。資材価格の引き下げ交渉などが奏功し、価格は横ばいを維持している。

■共働き世帯のニーズをとらえた

成長の理由は、これまで首都圏の通勤圏内で戸建てを持つのは不可能と思っていた、年収500万円程度の平均的な会社員をターゲットに据えたことが大きい。

同社は大手ハウスメーカーも敬遠する値段のつきにくい歪(いびつ)な三角形状のような土地でも積極的に購入。中途半端な大きさの土地も、独自のノウハウで3分割や4分割することで、戸当たり単価を抑制。狭小地に安価な木造3階建て、3LDKの戸建てを供給することを可能としてきた。

 「最近の若い人は合理的」と分析するのは、企画本部長の若旅孝太郎・取締役執行役員。直近の国勢調査によれば、共働き率は15年に6割を超えた。

そのため、通勤に30分以上はかけたくない。日中は家にいないので日当たりは関係ないし、庭もいらない。だが、マンションに住んで階上・階下の住人に気を遣いたくない……。同社はこうした生活文化の変化の追い風をうまくとらえた。

今18年9月期の業績は売上高3800億円(前期比24%増)、営業利益447億円(同18%増)を見込み、13年9月の上場時に比べ共に約4倍に成長。株価も初値の1050円(調整後株価)からこの3月には6500円台をつけるなど人気を集める。

 「戸建て事業の仕組みの完成度は高く、営業力も強い。出店エリアを拡大すれば、一定程度は勝てる」と、若旅取締役は自信を隠さない。

■営業はしつこい? 熱心なだけ?

実際、17年4月にはタワーマンション激戦区の川崎市・武蔵小杉に出店し、毎週1棟程度はコンスタントに戸建てを売っているという。「人員に余裕さえあればもっと展開できるのだが、人材採用と教育が追いついていない」(同)。

現時点で懸念があるとすれば、着信拒否をしたくなる電話攻勢など一歩間違えるとクレームにつながりかねない、あまりに熱心すぎる営業体制か。だが、「新しい物件が次々出るので、それを知っていただきたい」と、駅前で営業する若い社員に悪びれた様子はない。

 大都市圏で若年層のニーズをとらえた、オープンハウスの快進撃は当面続きそうだ。

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