猛暑の“怪” 気温・エアコン出荷記録更新なのに…電力消費2位

すっかり秋めいた今も、いまだ体に染みついているような今夏の猛暑。8月の平均気温は各地で過去最高を記録し、エアコンも飛ぶように売れた。ところが、最近明らかになった全国の家庭での電力消費量は、意外にも過去最高とはならず、気温が平年並みだった平成20年の“後塵(こうじん)を拝する”結果に。「省エネ型エアコンの普及」「検針日数の違い」などの推測はあるが、はっきりとした理由はわからず謎を呼んでいる。
 気象庁によると、今夏(6~8月)の全国の平均気温は、統計を取り始めた明治31年以降で最も高く、8月に限ると、沖縄・奄美地方を除く各地で月平均気温が軒並み平年を2.0~2.7度上回った。大阪市内では、8月の最高気温の平均値が35.2度、日中を含む全体の平均気温も30.5度に達し、いずれも過去最高だった。
 猛暑を反映し、エアコンも増産ラッシュに。日本電機工業会によると、8月のエアコンの出荷台数は、データが確認できる昭和47年以降で最高の84万7千台にのぼったという。
 ところが、全国の電力会社10社が加盟する電気事業連合会(電事連)がまとめた8月の家庭用電力販売量(速報値)は273億1800万キロワット時で、前年同月を9.5%上回ったものの、20年8月を1.7%下回り、過去2番目となった。
 10社を個別にみても、過去最高となったのは北陸電力だけ。関西電力は50億7100万キロワット時で、20年などに続いて過去4番目の数値にとどまった。
 気象庁によると、20年8月の気温は「平年並みで、特別暑かったわけではない」という。なぜ、猛暑の今年に記録更新がならなかったのか。
 関電の担当者は「省エネ型のエアコンが普及したことが要因かも」と推測。ある大手電機メーカーによると、省エネ型エアコンは、10年前の機種に比べて3~5割の消費電力削減効果があるという。ただ、電事連の担当者は「2年間で急速に省エネ型が普及したとは考えにくい」と指摘する。
 これに代わる推論として、電事連の担当者は検針日数の違いを挙げ、「検針日が1日変わるだけでも電力量は変わる」と強調する。とはいえ、今年8月の検針日数は20年に比べて1~2日短かっただけで、決定的要因とは考えにくい。
 一方、“第三の説”となるのは「8月分」の定義だ。検針する日の違いで、世帯によっては7月~8月上旬の使用量を8月分に算入するケースもあるといい、必ずしもすべての世帯の8月使用量を反映した数値ではないという。関電担当者は「あくまで推測だが、9月分が過去最高になる可能性はある」と話す。
 結局のところ、確たる理由が判然としない“猛暑のミステリー”。「業務用電力量の減少なら、不況の影響など比較的わかりやすいが、今回の場合、これというはっきりした要因はわからない」。電事連関係者も首をかしげている。

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