猫200匹が島民と共存する「猫の島」 有名になって問題も

福岡県新宮町の相島(あいのしま)は、世界に名が知られる「猫の島」だ。一周約6キロの島に約270人の住民と200匹近い猫が暮らす。国内外から観光客が押し寄せ、島おこしへの期待が高まる一方、えさやりなどのマナー違反も後を絶たない。

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増えた観光客

 町によると、町営渡船で相島に渡った人は、14年度の約5万1千人から16年度は約6万6千人に。乗れない客が出た時に出す臨時便は、14年度は7回だったのが16年度は43回に増えた。

人気を背景に、旬の魚を使ったバーガーを提供する「島カフェあいのしま」が4月にオープン。渡船場前にも軽食店ができた。

町は8月末、島のPR動画をつくった。猫好きで知られる英国の人気歌手エド・シーランさん(26)の大ヒット曲「Shape of You」が流れ、島の海や山を背景に猫たちが登場。動画の最後では、英文で「拝啓エド・シーラン様(中略)猫があなたを待っています」と来島を呼びかける。町政策経営課の敷田早紀さん(26)は「公開後、外国の方の訪問が増えている気がする」と話す。

絶妙な共存、岐路に

「相島は、猫と日本人の古き良き関係が残っている。長年、絶妙な共存関係があった」。島で猫の調査を続ける西南学院大の山根明弘准教授(51)はそうみる。

相島の主産業は漁業。猫は、家に保管している穀物を食べたり漁具を破ったりするネズミを退治し、魚をさばいた後のアラも食べてくれる。相島渡船待合所で働く山田あゆみさん(55)は「島の人にとっては愛玩動物ではない。『そこにいる』存在」と言う。

そんな関係がいま、岐路に立っている。原因が観光客によるえさやりだ。

山根准教授によると、調査を始めた1989年には年に1回だった島の猫の出産が、今は2回になっている。「不妊や去勢手術を受けていない猫の栄養状態がよくなれば、出産回数が多くなり、爆発的に増えてしまう。魅力ある島として存在し続けるためにも、えさやりはしないでほしい」

この問題には、観光客が訪れるようになった他の「猫の島」も悩まされている。瀬戸内海に浮かぶ高松市の男木(おぎ)島では昨年、頭数を抑えるためほぼ全ての猫に不妊手術をした。関係者によると「猫がいなくなっても構わない」という声もある。愛媛県大洲(おおず)市の青島も3年前、手術を始めた。市の担当者は「増えれば掃除も大変。島に人がいなくなる可能性もあり、徐々に減らしている」と言う。

「にっぽん猫島紀行」(イースト新書)の著書がある瀬戸内みなみさん(50)は「島には島の暮らしがある。かわいいからと安易にえさをあげず、島に敬意を持って訪れてほしい」と話す。

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