現代の名工、宮城県内から5人 精進重ね技極める

優れた技能で業界の振興に尽くした人を顕彰する2013年度の厚生労働大臣表彰「現代の名工」に、県内から内崎隆幸さん(54)、高橋信雄さん(59)、松原正道さん(60)、佐藤義明さん(66)、佐藤和則さん(60)の5人が選ばれた。長年の精進が今、輝きを増す。
◎地場食材活用、店の味を探求
西洋料理人/佐藤和則さん(60)/仙台市太白区あすと長町
 「正直にお客さまと食材に向き合い、笑顔にしたい」。そんな思いを胸に42年間、厨房(ちゅうぼう)に立ち続ける。
 北上市出身。花巻農高卒業後、JR仙台駅前にあった仙台ホテルを皮切りに、スイスやフランスでの修業を経て、ホテル法華クラブ仙台(青葉区)で約10年間、総料理長を務めた。2002年6月、広瀬通近くに念願の自らのレストラン「シェ・パパ」を開いた。
 地場の良質な食材を引き立たせる調理技法を、日々探求する。「店ならではの味を生み出すため、和食の調味料を加えたり、ヨーロッパにない食材の組み合わせを工夫したりしている」と言う。
 このような料理への真摯(しんし)な姿勢が認められた。「東北の人に親しまれるフランス料理を作り続ける」と「生涯一料理人」を貫く。
◎技術開発進めて新素材に対応
電気めっき工/松原正道さん(60)/富谷町あけの平
 工業製品の美しさ、耐久性向上に欠かせないめっき。素材の進化とともに常に新しい表面処理技術の開発に挑戦し続け、顧客の信頼を得てきた。「プロとして『できません』では恥ずかしい」。職人の自負心がのぞく。
 最近も、環境負荷やコストを軽減する独自の研磨剤の開発に成功した。直径0.7ミリの球状部品に4層のめっきを施す量産技術も確立した。
 印象深いのは、約30年前の生産ラインの整備作業だ。国内初となる海外製大型機械の導入とあって、4日間の予定だった新婚旅行を1日で切り上げて稼働準備に打ち込んだ。
 めっき加工会社ケディカ(仙台市)に勤務。社内勉強会で次代の育成に努めるほか、県内の小学校にも頻繁に出前授業に出向く。「地域社会にめっき技術を伝えていきたい」と意欲を語る。
◎日本庭園の美、感覚磨き追求
造園工/佐藤義明さん(66)/名取市増田柳田
 名工選出の知らせに「身に余る光栄です」と謙虚に語る。43年間にわたって造園の道を歩んできた。「最初のころは高度経済成長で住宅団地の造成が相次ぎ、本当に忙しかった」と振り返る。
 伝統的な日本庭園の美を追求してきた。先輩たちから剪定(せんてい)技術などを学ぶとともに、京都の神社・仏閣を視察するなどしてわび、さびの感覚を磨いた。
 「一つの木、一つの石にも顔、形、姿がある」と感じている。素材を生かし、花や木が持つ生命力を最大限引き出すよう心掛けてきた。「その時だけでなく、数年先の姿を想像して手を入れることが大事だ」と話す。
 忙しい現代人にこそ心を癒やす緑の空間が欠かせないと考える。「若手の育成にも努めながら、体力が続く限り仕事を続けたい」と語る。
◎郷土への思い、後進育て還元
フライス盤工/内崎隆幸さん(54)/仙台市泉区鶴が丘
 33年間勤めた大手家電メーカーの県内工場を退職し、昨年4月、キョーユー株式会社(美里町)に転職した。航空、医療、半導体などミクロン単位を要求される部品をフライス盤で加工する。東北大や県産業技術総合センターの協力を受け、国の補助事業による医療関係の新たな部品加工技術の開発でプロジェクトリーダーも務める。
 宮城に生まれ、宮城で技術を磨いた。郷土に対する思いは人一倍強い。「先輩や周囲の方々の力添えに恵まれたおかげ」。仕事の傍ら、県立仙台高等技術専門校の非常勤講師として、また、県内の工業高を巡り後進の指導に力を注ぐ。
 趣味の自転車で体力作りにも励む。「ものづくりの楽しさ、喜びを伝えたい。ものづくりの宮城と言われるよう力を尽くしたい」と意気込んだ。
◎砥石に心込め、金型仕上げる
研磨盤工/高橋信雄さん(59)/大崎市古川小林
 パソコンや携帯電話のSDカードなどの差し込み口「コネクター」や検出スイッチの部品を大量生産するための金型づくりを、勤務先のアルプス電気で35年間担当した。1ミクロンの精度や高難易度の技能を持ち、民生用製品の金型製作に関する業界の第一人者と言われる。
 「研削加工は砥石(といし)ではなく心で削るものと、自分に言い聞かせてきた」と語る。機械いじりが好きだった少年は、見込まれて先端技術の職場へ。腕を上げ続け、「異形状加工の鬼」とも呼ばれた。「やるほどに面白みを感じた。やりがいがある」と笑う。
 2007年4月から同社北原工場(大崎市)の研修所で後進を育成。「日本の誇るべき技能を発展させ、受け継いでほしい」と、社内をはじめ高校生や協力企業など地域の技能向上に力を注ぐ。

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