今年最も話題となった言葉を選ぶ『現代用語の基礎知識選 2019ユーキャン新語・流行語大賞』のノミネート30語が6日、発表された。日本が初の8強入りを遂げ、列島が沸いたラグビーW杯日本大会を受け、チームのスローガン「ONE TEAM(ワンチーム)」、姫野和樹選手が得意とした技「ジャッカル」、稲垣啓太選手の「笑わない男」、日本公式キャッチコピー「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」「にわかファン」など、ラグビー関連が多数選ばれたほか、「あな番」「命を守る行動を」「タピる」「令和」などが選ばれた。
2019年は、用語も「明」と「暗」がはっきりした年といえ、「明」は、初出場で初優勝。日本人では、42年ぶりに全英女子オープンを制したスマイリングシンデレラ。そして、最も注目されたのはラグビーワールドカップ関連の用語の数々。「ONE TEAM(ワンチーム)」をはじめ多くの言葉が人々に受け入れられた。「暗」では、台風関連の用語がマスコミをにぎわし、SNSなどが日常的となり、ネット発の用語は落ち着いてきたといえる。
エンターテインメントとしては、秋元康氏企画の日本テレビ系テレビドラマで、25年ぶりの2クール=半年連続ドラマとして話題になった「あな番(あなたの番です)」、スマホ向け位置情報ゲーム『ドラゴンクエストウォーク』が2019年9月に配信された「ドラクエウォーク」、特定地域をディスる(馬鹿にする)映画が、その地域で熱狂的に受け入れられた「翔んで埼玉」、米津玄師が作詞・作曲・プロデュースした「パプリカ」などが選ばれた。
選考委員は、姜尚中氏(東京大学名誉教授)、金田一秀穂氏(杏林大学教授)、辛酸なめ子氏(漫画家・コラムニスト )、俵万智氏(歌人)、室井滋氏(女優・エッセイスト)、やくみつる氏(漫画家)(50音順)、大塚陽子氏(『現代用語の基礎知識』編集長)。
ノミネート語の中から『2019ユーキャン新語・流行語大賞』トップテンならびに、年間大賞を、12月2日に発表、表彰式は都内ホテルにて開催する。
■ノミネート語30は以下のとおり(50音順)
1.あな番(あなたの番です)
2.命を守る行動を
3.おむすびころりんクレーター
4.キャッシュレス/ポイント還元
5.#KuToo
6.計画運休
7.軽減税率
8.後悔などあろうはずがありません
9.サブスク(サブスクリプション)
10.ジャッカル
11.上級国民
12.スマイリングシンデレラ/しぶこ
13.タピる
14.ドラクエウォーク
15.翔んで埼玉
16.肉肉しい
17.にわかファン
18.パプリカ
19.ハンディファン(携帯扇風機)
20.ポエム/セクシー発言
21.ホワイト国
22.MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)
23.◯◯ペイ
24.免許返納
25.闇営業
26.4年に一度じゃない。一生に一度だ。
27.令和
28.れいわ新選組/れいわ旋風
29.笑わない男
30.ONE TEAM(ワンチーム)
■選出された30語の説明は以下のとおり
「あな番(あなたの番です)」
秋元康企画の日本テレビ系テレビドラマで、25年ぶりの2クール=半年連続ドラマとして話題に。新婚夫婦が交換殺人ゲームに巻き込まれ、ネットでは視聴者による「考察合戦」が繰り広げられるほど予想できない展開で人気となった。第2章「反撃編」からは、TBS系『はじ恋(初めて恋をした日に読む話)』にも出演した横浜流星も登場した。
「命を守る行動を」
気象庁が2013年から運用を開始した「特別警報」は、気象災害や水害、地震、噴火などの重大災害が起こるおそれが著しく大きい場合に出される。経験したことのないような異常な現象が起こり得る状況のため、対象とされる地域の住民はただちに「命を守る行動をとる」ことが推奨される。台風19号ではテレビやラジオでも特に多く耳にした。建物等で上下垂直方向に避難する垂直避難など臨機応変な対応を促し、注意喚起をした。
「おむすびころりんクレーター」
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した小惑星探査機「はやぶさ2」により2019年4月に生成された、リュウグウ表面の人工クレーターの愛称。世界各地の子ども向けの物語にちなんだ名前を付けることになっており、公式ではなくプロジェクトチーム独自提案の愛称という扱い。
「キャッシュレス/ポイント還元」
クレジットカードや交通系ICカードなどを利用した現金を使わない決済方法。10%への消費税増税の際、ポイント還元事業とセットで経済産業省により後押しされた。さかんに宣伝されたが、ポイント還元については事前登録が必要なものも多く複雑でわかりにくいという声もあった。ただ、キャッシュレスで買い物する層が増えたといわれている。
「#KuToo」
セクハラ被害を告発し撲滅するムーブメント「#MeToo」になぞらえ、「靴+苦痛+MeToo」をあわせた造語。職場で女性がハイヒールやパンプスの着用を義務づけられている慣例への抗議運動として、元グラビアアイドルでライターの石川優実が提唱した。
「計画運休」
台風接近など列車の運行に影響が予想される場合に、安全の確保と混乱の防止を図るため、風速や雨量が規制値に達する前に運転を取り止めること。台風15号、19号ともに鉄道各社により実施された。
「後悔などあろうはずがありません」
大リーグ・マリナーズのイチロー選手が3月、東京ドームでのアスレチックスとの開幕2戦目終了後に引退を表明。引退会見で決断に対して問われた際にこたえた言葉のひとつ。
「サブスク(サブスクリプション)」
本来は定期刊行物の購読・契約などを意味する言葉だが、近年、ゲーム、動画、音楽など配信サービスのデジタルコンテンツの定額使い放題サービスを意味するようになった。さらに、服飾品のレンタルサービスや飲食店の飲み放題の月額制など、非デジタルも含む広範なビジネス分野にも広がっている。
「ジャッカル」
ラグビーワールドカップ日本大会で、フォワードの姫野和樹選手が得意とした技。タックルされ倒れた相手選手のボールを奪いにいく技で、立ったままボールにからむプレーを動物のジャッカルにたとえたもの。
「上級国民」
4月に東京・池袋で起きた自動車暴走事故の高齢加害者が逮捕もされず容疑者とも呼ばれず、「元院長」と報道された点に注目が集まった。特権的な立場だったからこそ逮捕されなかった、との憶測がネットを中心に広まり警察や報道を批判する動きも広がった。
「スマイリングシンデレラ/しぶこ」
女子ゴルフメジャー「AIG全英女子オープン」で優勝した渋野日向子選手。日本勢の海外メジャー制覇は1977年の全米女子プロ選手権の樋口久子選手以来、男女を通じ42年ぶりで一躍時の人に。笑顔全開のプレースタイルが「スマイリングシンデレラ」と海外で称
され話題を呼んだ。渋野選手が出場する試合には大勢のギャラリーが集まり、しぶこフィーバーでテレビ中継の視聴率もうなぎ上りという。
「タピる」
タピオカパール(キャッサバで作った団子状の粒)をミルクティーなどの飲料に入れた台湾発祥の「タピオカドリンク」が流行した。タピオカドリンクを飲むことをあらわす「タピる」「タピ活」などの派生語もうまれ、インスタ映えすることでブームが継続した。狭いスペース、低コストで運営できることで繁華街に専門店が林立した。
「ドラクエウォーク」
スマホ向け位置情報ゲーム『ドラゴンクエストウォーク』が2019年9月に配信された。RPGゲームの王道である「ドラクエ」の世界を冒険しつつ、健康的に歩きながら楽しめるスマホゲームアプリとして話題に。
「翔んで埼玉」
特定地域をディスる(馬鹿にする)映画が、その地域で熱狂的に受け入れられた。映画『翔んで埼玉』は漫画家・魔夜峰央による未完のギャグ漫画が原作で、埼玉県民が東京都民に虐げられる架空世界が舞台。埼玉県を中心とした全国的なヒットとなった。
「肉肉しい」
近年のかたまり肉や熟成肉、肉バルなどの肉ブームから、より「肉っぽさ」を感じる料理を食べたときに使うことで数年前から広がっている。レシピサイトなどでも多用されているが、国語の辞書には「憎々しい」しか載っていない。食に関して「◯◯しい」という表現が、増えていくのかもしれない。
「にわかファン」
ラグビーワールドカップ日本大会は、アジア初の開催で、開幕戦から徐々に盛り上がりをみせた。日本代表の快進撃で8強入りを勝ち取り、史上初の決勝トーナメント進出も決めたことで、「にわか」を自認するファンが増えた。普段、ラグビーを観戦していないような人びとが、ワールドカップのことを話題にする際に「にわかですけど」と一言つけて語る姿が多く見られた。
「パプリカ」
米津玄師が作詞・作曲・プロデュースする、NHKの「2020応援ソングプロジェクト」の曲。5人の子どもユニット「Foorin」が踊るダンスが子どもたちに人気となった。今夏、米津本人がセルフカバーして話題に。
「ハンディファン(携帯扇風機)」
小型扇風機に持ち手が付いた商品がブームに。もともと中国などで若い層に流行っていた商品が国内でも流通するようになり、低価格の商品も増えたことで老若男女に利用が拡大した。ハンズフリー商品なども登場し、夏場は多く見かけた。
「ポエム/セクシー発言」
小泉進次郎環境大臣が、福島第一原発事故で発生した除染廃棄物の最終処分場が決まっていないことを問われて返した発言から、小泉ポエムとして話題に。また、出席した国連気候行動サミットで「気候変動のような大きな問題は楽しく、クールで、セクシーに取り組むべきだ」と発言したことも話題に。さらに、結婚を決めたときや内閣改造で大臣就任の際に発した言葉が「理屈じゃない」。
「ホワイト国」
輸出管理制度の中で、優遇措置の対象国を日本では「ホワイト国」と呼んでいた。現在の名称は、グループAと変わった。韓国をホワイト国から除外し、日韓関係は混迷を深めている。
「◯◯ペイ」
現金以外で代金を支払うキャッシュレス決済の競争が激化する中、ここ数年で急速に増えたのが◯◯ペイと呼ばれる「QRコード」を使う方式である。店側の端末に表示されたQRコードをスマホで読み取ったり、支払い者のスマホに表示したQRコードを店側が読み取ったりして決済する。PayPay、7ペイ、ファミペイ、などさまざまな「Pay」が生まれた。
「MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)」
日本陸上競技連盟が東京五輪に向け発表したマラソンの選考システム。陸連が指定した大会(MGCシリーズ)で、所定のタイム、順位をクリアした選手が19年9月15日に行われた選考レース(MGCレース)に出場する権利を得る。三枠目は、19年冬から20年春にかけての選考対象レースMGCファイナルチャレンジの結果しだいで決まる。
「免許返納」
政府や自治体などが呼びかけるものの、生活に車を必要とする地域などではなかなか難しい運転免許証の自主返納。高齢ドライバーによる事故が報道されたり、芸能人の間でも返納が広がり、後期高齢者の返納件数も増えているという。
「闇営業」
吉本興業などに所属するお笑い芸人が、振り込め詐欺グループの会合に参加しギャランティーを受け取っていたことが明らかになった問題で、業界内では「直」という言い方が一般的とされるが、タレントが事務所を通さず直接受ける仕事のことがメディアでこう表現された。所属芸人の会見に続き、社長が会見することに発展し、騒動となった。
「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」
ラグビーワールドカップ日本大会の、日本公式キャッチコピー。
「令和」
新元号「令和」が発表され、さまざまな派生表現も生まれた。令和おじさん、令和婚、令和の怪物、令和初、令和最初の、、、などである。社会生活においては元号離れが進んでいる現状だが、元号の出典は日本最古の歌集である「万葉集」であることや元号決定までの経緯なども公表された。考案者探しなど、連日テレビや報道が盛んだった。
「れいわ新選組/れいわ旋風」
山本太郎氏が4月に旗揚げした「れいわ新選組」は、参議院選挙までの約3ヶ月間で4億円以上の寄付を集め、独自の選挙戦を展開した。街頭演説がスマホで動画撮影され、ツイッターで拡散し、波となった。格差是正と政治の役割を真っ正面から語り弱者に寄り添う演説に多くの人が魅せられた。
「笑わない男」
ラグビーワールドカップ日本大会で活躍した、プロップの稲垣啓太選手のこと。スコットランド戦で代表初トライを決めた強面の選手で、大金星後の集合写真でも笑顔なし、とスポーツ紙の一面を飾る。
「ONE TEAM」
ラグビーワールドカップの日本代表選手たちはジェイミー・ジョセフヘッドコーチのもと早い段階から一つに結束することをテーマに掲げていた。日本がプールステージ(一次リーグ)を突破し8強を勝ち取り初の決勝トーナメント進出という大きなインパクトを与えたことで、このスローガンも広く知られることになった。