文部科学省は、デジタルや脱炭素など成長分野の人材を育成する理工農系の学部を増やすため、私立大と公立大を対象に約250学部の新設や理系への学部転換を支援する方針を固めた。今年度創設した3000億円の基金を活用し、今後10年かけ、文系学部の多い私大を理系に学部再編するよう促す構想だ。 【図】理系学部増設へ、ひと目でわかる政府の支援内容
新設・転換 10年で250目標
同省は、希望する私立や公立の大学を公募し、学部新設や転換に向けた検討や設備費用など最長7年にわたり、1校あたり数億円~約20億円を支援する方向だ。公募期間は今年3月からの10年間とし、250学部程度の新設や学部転換を見込む。1校に1学部新設された場合、私立と公立の全721校の3分の1にあたる規模となる。
また、情報系の高度専門人材の即戦力を養成するため、国立大と高専も対象に含める。専門人材の育成に実績がある学部・研究科などの定員を増やすための人件費や施設整備費として最大10億円を助成し、60校程度を見込む。
同省では毎年私大に対し、基金と同程度の補助金を交付している。学部設置後も安定して運営ができるよう、この補助金の仕組みも変える。理系学部の優遇措置として私学助成を引き上げる。理系学部での教員や学生1人あたりにかかる経費は文系学部と同額で算定されていたが、理系学部の経費を高めに設定する。2023年度にも始める予定だ。
背景にあるのは、日本の理系人材育成の停滞だ。大学で理系を専攻する学生は経済協力開発機構(OECD)の平均の27%より低い17%にとどまる。OECD諸国が増加しているのに対し、日本はほとんど変わっていない。経済産業省は、30年にはIT人材が最大79万人足りなくなると試算する。
ただ、東京23区の大学には、地方創生の観点から学部増設への規制がかかる。18年度からの10年間、東京23区の大学は定員増を伴う学部の新設が法律上禁じられている。これに対し、東京都や日本私立大学連盟は規制撤廃を要望している。
政府は昨年9月から、内閣官房の有識者会議で規制のあり方について議論を進めており、私大関係者からは成長分野に限り例外的に学部の新設などを認めるべきだとの意見も出ている。22年度中にも結論が出る見通しだ。