サステイナブルエネルギー開発(仙台市)が、生ごみ、衣類、ふん尿など有機廃棄物からエネルギー原料を生成する装置「ISOPシステム」を開発し、4月から南相馬市の施設で実証実験を行っている。事業は東日本大震災を契機に本格化。二酸化炭素(CO2)排出抑制にもつながるシステムとあって、気候変動への対策などをうたった持続可能な開発目標(SDGs)の実現を後押しする可能性がある。(防災・教育室 須藤宣毅)
被災地支援が原点 火力発電所の石炭代替でCO2削減も
同市原町区の事業所で5月20日に見学会があり、岩手、宮城、福島3県の企業や自治体の担当者20人が参加した。実験ではプラスチック片と木の皮を装置に投入。高温、高圧の亜臨界水処理技術で分解、滅菌し、3時間後、炭素を凝縮した粉末状のエネルギー原料ができた。
原料を加工するとバイオ石炭、バイオコークス、メタンガス、水素といった燃料になり、一連の工程に必要な熱量の約3・5倍のエネルギーが得られる。バイオ石炭の火力は石炭とほぼ同じで、石炭の代替品として火力発電所で使えば化石燃料由来のCO2排出削減効果が期待できる。
装置の利点について、光山昌浩社長は「ほぼ全ての有機廃棄物を水分量に関係なく処理できるため、投入時に生ごみやプラスチックなどを分別する必要がない」と説明する。滅菌により悪臭も出ない。
装置は電気で動かす小型(容量20~200リットル)、バイオガスなどを使う大型(3000~5000リットル)の2タイプ。小型は店舗やオフィスビル、大型は自治体や大規模工場での稼働を想定している。
小型は車に積めるため、被災地での活用も可能だ。災害ごみや仮設トイレのふん尿を処理しつつ、生成された燃料を使って電気や熱を供給できる。震災時には津波被害を受けた宮城県南三陸町に試作機を運び、避難所の床暖房や仮設風呂に使った。この経験が事業の原点になっているという。
自治体が処分に頭を悩ます駆除した害獣にも対応する。北海道でエゾシカを使って実証実験したところ、角やひづめも処理できた。見学した遠野市環境課の担当者は「埋めたり焼却したりするより簡単で、エネルギー原料にもなる点に注目している」と話す。
装置の価格は小型が800万~5000万円、大型が3億~4億円。損害保険ジャパンが業務連携している。光山社長は「オフィスビルや商業施設でエネルギーの地産地消ができる。機動性が高い分、用途もさまざまな可能性を秘めている」と話す。