生存率が“上がる”歩き方があるらしい? 「歩くスピードと寿命」の奇妙な関係

■寿命は予想できる!?

自分の寿命を知りたい、というのは多くの人が思う願い。しかし、それを実際に予想することは難しいものです。現実的に考えていくと、血圧・BMI・喫煙歴・既往歴などから予想することになるでしょう。

しかしながら、寿命は意外なものから予想できるという可能性が、ある論文によって示されました。なんと、それは「歩くスピード」です。

■アメリカの論文で発表された歩行スピードと寿命の関係

これはアメリカの科学雑誌『Journal of the American Medical Association』から2011年に発表された「Gait Speed and Survival in Older Adult」という論文によるものです。

34,485人の65歳以上の大人を対象に、6~21年間にわたって歩行スピードと寿命の関係を記録し、その間に亡くなった17,528人の方々の歩くスピードと寿命の関係を調べています。

平均的な歩行スピードは1秒間に0.8メートルでしたが、1秒間に1メートル以上歩く人の寿命は、他の平均的な歩行スピードの人たちよりも長いことが明ら かになった、ということです。さらに、歩くスピードと年齢・性別を組み合わせることで平均的な寿命を予測することもできると、研究チームは述べています。

■歩行は動きの集大成

「歩く」という行為は、ふだん私たちが最も頻繁に行っている行為です。歩くスピードは急いでいる時などを除いて、基本的にはどんな時でもある程度一定のスピードに保たれていると研究で明らかになっています。

さらに、歩くという行為は私たちが簡単に行っているように見えますが、実はかなり複雑な行為で、神経系・筋肉・呼吸・循環系などのすべての働きを正常に組 み合わせてこそ行える行為です。つまり歩くスピードが遅い場合、それは私たちの身体のどこかに異常が起こっていたり、非効率な身体の使い方をしている、と いうサインになりうると言えます。

このことから、ある個人の歩くスピードを追跡することで、病気や身体の異常の変化にいち早く気づくことができるということにもなります。歩くスピードがある時からいつもより遅くなっている場合、身体になんらかの異常が起こっているのかもしれません。

■ただ早く歩けばいいというわけではない

この研究チームは、一年間のなかで歩くスピードが向上した場合、生存率も上がる、と述べていますが、それは「寿命が延びるのでなるべく早足で歩きなさい」 という単純なものではなく、自然な結果として歩くスピードが早くなれば、それは効果があるかもしれない、という程度のものです。実際に歩くという行為には 血圧を下げる、体重の維持・気分の向上・血液循環の促進など様々なポジティブな効果があるとされています。

歩くことは移動としての役割 だけではなく、身体の健康状態を表すバロメーターとしても有効です。スピードだけを早くすれば不健康な状態が治り健康になる、ということではないので、健 康状態のチェック方法として活用してみましょう。周りの人や自分の歩くスピードが遅くなってきた場合、それは何かしら身体に変化が起こっているかもしれま せん。

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