静岡県監査委員は7日までに、県立磐田西高校(磐田市中泉)で2009年度、生徒の1割に当たる72人が万引きなどの非行に関わっていたことを公表した。同校によると、最も多く万引きが行われたのは、昼時の校内のパン店だという。監査委員は関与した人数の多さに「あまりにも深刻」として、異例の学校名公表に踏み切った。
磐田西高校によると、生徒の万引き疑惑が浮上したのは09年11月。ある保護者から「息子の友達が、量販店で万引きをしたらしい」との情報が寄せられた。該当する2年男子に話を聞いたところ、衣類を万引きしたことが分かり「そこから横に広がっていった」という。
教員が生徒一人一人から聞き取りを始めると「自分も万引きしたことがある」「人がしているのを見た」という証言が相次ぎ「卒業が近い3年生」や「中だるみの2年生」の男子生徒72人が関与したことが発覚。中には「10回以上万引きした」と話す生徒もいたと言う。
特に甚大な被害を受けたのは、校内のパン売り場だ。昼時になると「生徒がワーッと押し寄せる」が、対応していたのは業者の店員1人。金を払うことなく、店先のパンをつかんで持ち帰るという手法が横行。47人の生徒が“持ち逃げ”を告白したという。
ところが、「業者から収支が合わないという報告もなかった」ことで発覚は遅れた。「パンで味をしめ、校外のコンビニや量販店で万引きをするようになっていったようです」と同校。関与した生徒を、3~20日間の自宅謹慎にした。
その後、学校は規範意識の回復のため、パン店を業者ではなく生徒に運営させるという対策をとった。同校には「総合ビジネス科」もあり、卒業後に就職、商売する側に立つ生徒も多い。そこで「売る人の気持ちを考えなさい」と指導。同科の生徒が、名付けて「スマイルベーカリー」を切り盛りすることで収支が合うようになったという。
ただし同校では昨年も、生徒2人が校内で現金を盗む事件が起き、2年間で「非行への関与」が74人に。報告を受けた監査委員は「数字として多いと認識した。学校にも聞き取りをし、慎重に検討した上で学校名を公表した」と話している。
◆静岡県立磐田西高校 1939年、中泉町立中泉商業学校として設立。商業教育の実績が高い。男女共学で、現在は普通科と総合ビジネス科に計739人が在籍。卒業後は、国立大学を含め多数が進学する一方、昨年度は就職を希望した生徒の内定率も100%だった。スポーツは特に剣道が盛んで、全国大会の常連校。