生成AIに国際枠組み、岸田首相が創設表明へ…発信者明示技術の推進を支援

岸田首相は、5月上旬に開かれる経済協力開発機構(OECD)の会合で、生成AI(人工知能)の規律と活用の両立に向けた国際枠組みの創設を表明する。40か国以上の参加を見込んでおり、日本として国際ルール作りを主導する狙いがある。発信者情報を明示するデジタル技術「オリジネーター・プロファイル(OP)」の有用性を示し、社会実装を進めるための支援も打ち出す。 【図解】一目でわかる…OPを使った「信頼できる」情報流通の仕組み

 複数の政府関係者が明らかにした。会合はOECD本部があるパリで開かれ、首相は生成AIの国際統治を議題に演説する。

 演説原案によると、国際枠組みの名称は「広島AIプロセス フレンズグループ」で、首相は「AIは人類全体に影響を及ぼす革新的技術で、多くの国が共通認識を持つことが重要だ」と呼びかける。生成AIが保健医療や気候変動といった課題解決に貢献するとの期待を示しつつ、「偽情報のリスクといった影の側面とも戦わなければならない」と強調し、OECDの協力を要請する。

 日本は昨年、G7(先進7か国)議長国として、生成AIの課題を協議する「広島AIプロセス」を提唱し、初の包括的な国際合意をまとめた。新たな国際枠組みでは、その成果に賛同する国をOECD加盟国を中心に募る。枠組みには、G7各国に加え、EU(欧州連合)加盟国や韓国、シンガポールなどが参加する見通しとなっており、日本政府は参加国のさらなる拡大に向けて、各国に働きかけを続ける考えだ。

 首相は演説で、広島AIプロセスでまとめた生成AIのリスクに対処する国際指針や行動規範に言及し、「フレンズグループとともに、世界中の人々が安全、安心で信頼できるAIを利用できるよう協力を進めていく」と訴える。

 偽情報対策を巡っては、「技術的措置の積み上げも重要だ」と指摘し、発信者情報を確認する技術の社会実装に向けた取り組みへの支援を宣言する。首相の演説に合わせ、AIのリスクや広島AIプロセスの進展などを紹介する動画を会場で上映し、その中で偽情報の識別に役立つ技術としてOPを紹介する方向で調整している。

 ◆オリジネーター・プロファイル(OP)=インターネット上の記事や広告に、第三者機関が認証した発信者情報を電子的に付与し、利用者が信頼性を確認できるようにする技術。メディアや通信企業などでつくる「OP技術研究組合」は2025年の実用化を目指している。

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