宮城県内各地から仙台へ、住まいを失うなどした生活困 窮者の流入が続いている。仙台を除く県内12市が、生活困窮者自立支援法に基づく「一時生活支援事業」に着手していないためだ。緊急避難施設(シェル ター)を運営し、困窮者を受け入れている福祉団体は「行政の怠慢と言わざるを得ない」と憤る。(報道部・斎藤雄一)
町村の支援事業を肩代わりする県はNPO法人「ワンファミリー仙台」、仙台市は社会福祉法人「青葉福祉会」とそれぞれ委託契約を結び、仙台市内で困窮者向けのシェルターを運営している。
両施設の利用者は本年度、既に178人(10月末現在)に達した。このうち判明分だけで19人が12市から受け入れた困窮者だ。ほかにも自主的に12市から仙台へ移動してきた困窮者が相当数いるとみられる。
支援法では、住居を持たない困窮者は現在地で保護するのが原則。だが、ある市の相談支援員は「市内で住む場所が見つからない場合、仙台のシェルターに連れて行くことが多い。その手続きが完了するまで、野宿を続けてもらうこともあった」と打ち明ける。
さらには「生活保護の受給者にならないよう自立を支援する」という法の趣旨をよそに、一足飛びで生活保護の受給手続きへと進むケースもあるという。
支援法は「困窮者が自立できるよう支援するプランの策定」(自立相談支援)を市の必須事業としている。プラン策定まで仮の住居を提供する上でも、本来ならシェルター設置が欠かせない。
一方で、1市当たりの相談件数は平均すると2カ月に1人前後にとどまっており、12市は「シェルターの維持はコストが割高」と自前設置に二の足を踏む。 現場の支援員は「件数は少なくても、緊急性の高い相談もある。隣接市と広域連携し、仙台以外にもシェルターが必要だ」と問題意識を共有するものの、行政側 から具体的な動きは見えてこないのが実情だ。
ワンファミリーは「シェルターを足掛かりにして社会復帰を果たす人はたくさんいる。一時生活支援事業もせず、一気に生活保護に回すのは法の趣旨に照らしてもおかしい」と訴える。
[一時生活支援事業]失業や借金が原因で住まいを失ったり、失う恐れのある生活困窮者に借り上げアパートなどの宿泊場所と衣食を3カ月間提供し、新たな住 居や働き口を見つけるまでの日常生活を支える事業。4月施行の生活困窮者自立支援法に基づく任意事業で、厚生労働省は福祉事務所がある市町村に実施を促し ている。