日本貿易振興機構(ジェトロ)は9日、尖閣諸島(沖縄県石垣市)国有化を機に広がった反日デモから1年後の日本企業の中国ビジネスの変化について行った実態調査(8月調査)を発表した。1月時点の前回調査に比べ、中国のビジネス上のリスクについて、「人件費の高騰」をあげる企業が17.8ポイント上昇し55.3%に達し、首位の「政情リスク」(55.5%)とほぼ並んだ。中国事業の「縮小や撤退を検討している」との回答は前回の7.3%から7.7%と微増だったが、「生産コストなど製造面で劣る」(52.0%)が理由のトップで、前回首位だった「カントリーリスクの高さ」(32.0%)を上回った。
この結果、日中関係悪化と相まって生産拠点をコストの低い労働集約産業を中心に東南アジアに移管する動きが加速。1~6月の日本企業の中国向け直接投資が前年同期比で約3割落ち込む一方、東南アジアへの投資は約2倍に増えており、生産拠点の「脱中国」が鮮明になった。
また、昨年9月中旬以降「中国ビジネスリスクが高まった」との回答は今年1月時点よりも17.6ポイント低下したが、52.2%と依然として高水準だった。
日中関係悪化による日本製品の買い控えについて、7割超が「影響がある」と回答。具体的には「反日デモの時期に受注が取り消され、成約できない状況が続いている」(化学)との声が聞かれた。また「年明けは好調だったが、景気減速による消費抑制や賄賂取り締まり強化で5~6月から売り上げが悪化している」(電気機械)と、事業環境の変化を指摘する声もある。
一方、事業展開では「拡充、新規ビジネスを検討」と回答した企業の割合は前回調査に比べ2.6%増の60.7%。依然として中国市場への期待は高く、環境汚染対策向け環境技術や急速な高齢化社会を背景に介護ビジネスの商機が広がっている。