アラフォーの3人に1人が未婚です
最近の大学では、年末ギリギリまで授業があります。半期15回の授業をきっちりやるよう、当局からお達しが出ているためです。
一昨年は、クリスマスの日に授業をやる羽目になりました。教職課程の授業なので6限(18:00~19:30)です。私は構いませんが、学生さんにすれば嫌がらせ以外の何物でもないでしょう。
私の頃だったら、学生が教授にブーイングを浴びせ休講を勝ち取ったものですが、今の学生さんは大人しい。クリスマスの日も出席率はさして変わらず、おめかしをしている子もあまりいません。
データによると、日本の大学生の8割が「恋人なし」となっています(内閣府『わが国と諸外国の若者の意識に関する調査』2013年)。なるほど、クリスマスの日に学生が子羊のように大人しく授業に出てくるわけですね。よく言われる、若者の「恋愛離れ」でしょうか。
しからば、私のようなアラフォー年代ではどうでしょう。この年代だと、多くの人が結婚して家庭を築いていますが、私のように「未婚&恋人なし」に留まっている者もいます。先日公表された、2015年の『国勢調査』のデータによると、35~44歳男性の未婚率は32.3%となっています。今となっては、アラフォーでも3人に1人が未婚です。
戦後初期の1950(昭和25)年では、この値はたったの2.6%でした。半世紀以上の隔たりがあるとはいえ、この変化はスゴイ。昔はお見合い結婚が主流で、いざとなったら周囲の取り決めで半強制的に結婚させられていたのですが、現在は違います。自由な恋愛婚が開かれたのはいいですが、モテナイ人間にとって苦悩の時代になったともいえましょう。
年収200万未満ワーキング・プア層の未婚率は6割!
はて、その「苦悩」を味わっているのは誰か。男性に限ってみると、身も蓋もないリアルが見えてきます。先ほど述べたように、近年のアラフォー男性の未婚率は3割ちょっとですが、年収別にそれを計算しグラフにすると図1のようになります。
年収が低い男性ほど、未婚率が高いというリニア(直線的)な傾向が認められます。年収200万未満のワーキング・プア層では、未婚率は6割近くにもなります。収入が上がるにつれそれは下がっていき、年収800万超のリッチでは1割前後です。
正視に耐えない(残酷な)現実ですが、男性の場合、一家を養う経済力が求められるためでしょう。だいぶ前に、婚活業者から案内のパンフが送られてきたことがありますが、エントリーシートが男女で違っていて、男性だけ年収記入欄があることに違和感を覚えましたねえ。
悲しいかな、希望と現実はかなり隔たっている
当然ですが、女性は結婚相手の条件として年収を重視する傾向にあります。明治安田生活福祉研究所の調査によると、30代の未婚女性の7割近くが年収400万以上、3割が年収500万以上の男性を希望しています。では、それに適う男性はどれくらいいるか。図2は、同じ30代の未婚男性の年収分布と照らし合わせたものです。
悲しいかな、希望と現実はかなり隔たっています。女性の7割近くが年収400万超の男性を望んでいますが、候補の男性の中でその稼ぎがあるのは3割弱しかいません。多いのは年収300万未満の男性ですが、それでよしとする女性はたった1割しかいない。
なるほど、男性では年収と未婚率がきれいにリンクするはずです。上図のようなミスマッチをいかにして摺り合わせるかが、婚活業者の腕の見せ所なのでしょうが。
女性が高望みしてけしからん、という感想もあるでしょう。親元にパラサイトしながら、自分の理想に適う男性が表れるのをいつまでも待ち続ける。こういう人を減らすため、親同居税を課したらどうかという議論もあります。
女が男に「高い年収」を期待せざるを得ない理由
ちょっと前までは、私もこういう考えを持っていました。しかるに、結婚した女性がバリバリ稼ぐのは難しい現実があることを思うと、致し方ないのかなという気もします。図3は、正社員男女の平均年収を未婚者と既婚者で比べたグラフです。
男性では未婚者より既婚者の年収が高いのですが、女性はその逆です。女性の場合、正社員でも結婚すると稼ぐのが難しくなる。家事や育児などによる縛りが出るためでしょう。
しかし何といいますか、未婚者では収入にジェンダー差がほとんどないのが注目されます。差が大きいのは既婚者です。結婚がキャリアに与える影響が、男女でいかに違うかを思い知らされます。女性が結婚相手の男性に、相応の年収を期待せざるを得ないわけです。
女性の社会進出が進むと(男女の賃金が平等化すると)、女性が結婚をためらうようになり、未婚化・少子化が進展するという論がありますが、それはあべこべでしょう。ア)結婚すると女性のライフチャンスが制約される、イ)女性は結婚相手に高い年収を期待せざるを得ない、ウ)このご時世、そういう男性は滅多にいない、エ)故に未婚化が進む、というのが真相ではないでしょうか。
随所で言われていますが、男性の腕一本で一家を養える時代はとうに終わっています。夫婦の二馬力が求められる時代です。社会の側にしても、労働力人口が減る中、人口の半分を占める女性の労働力率を高めるのが急務。時代は変わっているのです。
図3の折れ線の男女差が、今後どれほど接近するか。未婚化(少子化)や労働力不足といった重要問題の解決可能性を見て取る、重要なバロメーターといえるでしょう。