深刻な痴漢の被害を防ごうと導入された女性専用車両。 今では、全国31事業者の82路線で導入されています。ところが、男性車両ができたという話はいまだに聞いたことがありません。映画にもなった痴漢の冤罪 の影響も考えると、一つくらいあってもよさそうですが。なぜないのか、鉄道会社の理由は……。
国土交通省鉄道サービス政策室によると、2014年2月現在、全国の31事業者が82路線で女性専用車両を導入しています。全国初は東京の京王電鉄で01年3月から始めました。男性専用車両は「まだ聞いたことがない」とのことです。
一番電車には当時の扇千景国土交通相が試乗しました。「女だけなら安心。今日はSPも、男はみんな置いてきた」と扇氏。若き日に所属した宝塚歌劇団を思わせる「女の園」にご機嫌で、乗客に「私が守ってあげるわよ」と呼びかけていました。
痴漢の被害は深刻ですが、一方で冤罪事件も起きています。映画監督の周防正行さんは、2007年、痴漢冤罪事件を扱った映画「それでもボクはやってない」を手がけました。
周防さんは、2011年に始まった法制審の「新時代の刑事司法制度特別部会」で委員を務めています。
大阪市営地下鉄では、2008年2月、御堂筋線で女性が痴漢の被害を訴え、男性会社員が逮捕されました。しかし、後にこの訴えが虚偽だったことが判明します。
市交通局総務課の担当者は「公共の乗り物なので本来は専用車両を設けるのは望ましくないが、痴漢件数が多いので被害を減らすために女性専用車両を導入し た」と説明。「なぜ女性だけに専用車両があるのか」と批判的な意見も寄せられますが、男性専用車両の導入予定はないそうです。
JR西日本広報部の担当者は「痴漢に間違われるのはまれなケース。男性専用車両を求める声は多い状況にない」。別の鉄道会社の広報担当者は「男性専用車両はむさ苦しくて、乗りたくない人が多いのでは」と言います。
国交省にも男性専用車両を求める意見が年に数件寄せられているようですが、鉄道サービス政策室の担当者は「社会のニーズが高まるかどうかで、あとは各事業者の判断です」。
男性専用車両はなぜないのか。理由は、鉄道会社側が「ニーズがないから」と判断しているのが理由のようです。