「湯どころ」として知られる岩手県西和賀町が、町営の温泉施設10カ所のうち7カ所の売却に乗り出している。利用客の減少や施設の老朽化のためで、東北初の砂風呂「砂ゆっこ」のほか、0円での「購入」が可能な温泉もある。ただ、29日現在で応募はなく、町の担当者は「かなり厳しい」とこぼす。公募は30日に締め切られる。【安藤いく子】
売却先を公募しているのは、砂ゆっこ(売却最低価格1375万円)、丑の湯(同312万円)、福寿荘(同0円)など。書類審査やプレゼンテーションなどを経て、交渉権を得ることができる。最低5年間は温泉施設として営業し、第三者に譲渡できないなどの条件がある。
旧湯田町と旧沢内村が2005年に合併した西和賀町は、温泉地として親しまれている。湯田町では1980年ごろから町営温泉の整備が始まり、86年には「お湯~とぴあ構想」を策定して温泉を核としたまちづくりを目指してきた。
だが近年は過疎化が深刻で、利用者減少が続いている。西和賀町によると、人口は18年度が10年度と比べて15%減の約5600人。温泉利用者も同3割減の約24万人に落ち込んだ。利用料収入の減少に加え、老朽化で修繕・維持費の負担も大きい。18年度までの5年間、10施設ともそれぞれ単年度赤字から抜け出せず、町は年間で平均約1億2500万円を財政負担している。
町観光商工課の佐藤太郎課長は「問い合わせはいくつかいただき、『温泉でなければ応募したい』という人もいた。ただ、町としては地元の利用者がいることもあり、温泉施設の維持を目指す」と話す。応募がなければ、現在温泉を管理している地元商店会への譲渡などを検討する方針だ。