町外避難者「浪江帰還望まず」3割 子育て世代で顕著

福島第1原発事故で避難区域に指定された福島県浪江町の町民の3分の1が「町に戻らない」と考えていることが、町外に避難している町民を対象に町が行ったアンケートで分かった。放射能汚染で生活環境を取り戻せないと見越す人が多いためだ。町は帰還の姿勢を崩していないが、町民の3人に1人は帰還を望まない結果が示され、町の存続に影を落としている。(伊藤寿行、菊地弘志)
<放射線が心配>
 浪江町に戻る意思の有無を尋ねる設問で(1)放射線量が下がり、生活基盤が整備される(2)他の町民がある程度戻る―の2条件を満たしても「戻らない」と答えた人が32.9%に上った。2条件が整ったら戻るとの回答は43.5%、前者の条件をクリアしたら戻るとの答えは15.7%だった。
 戻らないとの回答者の中で、18歳未満の子のいる人(44.4%)が子のいない人(30.1%)を上回り、子への放射線の影響を心配して帰還をためらう心理がうかがえる。性別では女性、年齢別では30代以下の若い世代が帰還を希望しない傾向が強い。
 戻るのが難しい理由(複数回答)は「放射線量の低下が期待できない」(67.9%)が最多。「原発事故が収束していない」(57.0%)、「生活基盤の復旧・整備が困難」(54.8%)、「就労の場や仕事の確保が困難」(41.0%)と続き、生活環境が回復する可能性の低さを挙げる回答が目立つ。
 「行政によって居住地が用意された場合、どこなら住みますか」という問いでは「福島県内」が38.0%で、12.8%の「県外」を上回り、地元の県にとどまる考えの人が多い。
 「戻る」と答えた人のうち、「戻れるまで待てる期間は3年以内」との回答が62.6%を占めた。汚染が収まらずに避難生活が長引くと帰還意思を保てない心境が表れている。
<3区域に再編>
 政府は3月にも避難区域を年間放射線量が50ミリシーベルト以上で5年以上帰還が難しい「帰還困難区域」、20ミリシーベルト以上50ミリシーベルト未満で除染によって数年後に帰れる「居住制限区域」、20ミリシーベルト未満で生活環境が復旧すれば帰還可能な「避難指示解除準備区域」の3区域に再編する。
 浪江町は3区域に分割されるとみられるが、町民意思とのミスマッチが予想され、町として成立するのかどうかを危ぶむ声も出ている。
 馬場有町長はアンケート結果について「戻らないと答えた人は若い世代が多い。新たな人生を早くスタートさせる必要があり、その気持ちを尊重し、できる限りサポートする。何十年後かに戻る人がいるかもしれず、そういう人を受け入れられるようにしたい」と話している。
<浪江町民アンケート>昨年11月、高校生以上の町民約1万8500人を対象に郵送で実施した。回収率は59.6%。結果は策定中の復興ビジョンに生かす。町は全域が警戒区域、計画的避難区域に指定され、全町民が福島県を含む45都道府県に避難した。避難生活は10カ月を超す。

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