畜産物不正持ち込み 中国最多 18年4・2万件 3年で1・5倍 歯止めかからず

2018年に中国の旅行客が日本に不正に持ち込んだソーセージやハムといった畜産物の数が、ここ10年で最多だったことが農水省のまとめで分かった。4万2280件と3年で1・5倍に急増。中国でまん延するアフリカ豚コレラ(ASF)は、豚の加工品などを介して感染する恐れがあり、同省は旅客にルール順守を呼び掛けるが、違反に歯止めがかからない。同省の推計だと、中国からの豚肉由来の畜産物は現在も月1500件のペースで見つかっている。(金子祥也)

 18年に中国を含む世界から日本に不正に持ち込まれた畜産物は速報値で9万3957件(上位10カ国の合計)。10年は1万7815件だったが、インバウンド(訪日外国人)の増加で数が膨らみ、17年に9万件を突破。2年連続で過去最多の水準に達した。その4割超を占め、増え続けるのが中国。同国はASFが発生しているため、特に警戒が必要な国だ。

 日本は家畜伝染病予防法で、畜産物の輸入に同省動物検疫所の許可が必要と定める。ただ、個人消費用は検査しても許可されることはほぼなく、旅行客の持ち込みは実質できない。

 違法に持ち込まれた畜産物からは、実際に同省のモニタリング検査でASFウイルスが見つかっている。昨年10月、北海道の新千歳空港で没収したソーセージからASFウイルスを検出。他にも羽田、成田、中部、関西、福岡の各空港で感染した肉製品が出ており、18年10月から19年2月13日までの4カ月半で10件に達した。検査対象は没収物のごく一部で、感染した畜産物はもっと持ち込まれている可能性もある。

 畜産物はX線による発見が難しいため、主に検疫探知犬が探す。没収物の半数を探知犬が見つけるなど精度は高いが、全国で33頭しかおらず、配備するのは主要7空港だけだ。不定期で地方空港や港にも出動するが頻度は少ない。例えば、船の寄港数日本一の博多港は9割が中国からのクルーズ船だが、これまで探知犬の活動はない。同所にはASF拡大を受け、各県から探知犬の要望が寄せられているという。

 現在、地方空港では家畜防疫官による監視体制を強化。旅客が入国検査を終え、税関カウンターに向かうまでに声掛けする。ただ、「言葉の壁がある上、没収すると激高する人もいる」(企画調整課)ため、作業は難航することもある。携帯翻訳機・通訳を配備して対応を急いでいる。

 畜産物の不正な持ち込みは、100万円以下の罰金か3年以下の懲役に問える。同所は「ポスターで罰則を強調し、違反を防いでいる」(同課)としているが、多過ぎる違反件数に対して罰則を適用した例は少ない。自分たちで守るしか…

 インバウンドが増えている九州の産地は危機感を強める。みやざき養豚生産者協議会は、県内に寄港するクルーズ船のごみ処分地を県に確認するなど神経をとがらせる。「経済効果もあり、観光客に来るなとは言えない。自分たちで守るしかない」と覚悟する。

 鹿児島県黒豚生産者協議会の牛留道夫会長は「インバウンド需要も良いが、豚コレラ終息までは防疫に注力してほしい」と国に注文。台湾でASF侵入対策として不正持ち込みの罰金額を引き上げたことを踏まえ、「日本でも検査を厳しくしてほしい」と訴える。

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