登米産の銘柄牛「仙台牛」に統一 生産者団体、苦渋の決断

 宮城県登米市内で生産される最上級の銘柄牛が新年度、「仙台牛」に一本化される。背景には生産者の高齢化と後継者難に加え、東日本大震災に伴う福島第1原発事故による影響がある。10年前に始まった銘柄統一に向けた議論が震災を経て一気に加速した。姿を消す銘柄「石越牛」「はさま牛」の生産者団体にとっては苦渋の決断となった。
 石越牛、はさま牛を肥育する農家約40人は半数近くが60歳以上。後継者を確保できている農家は半数に満たないという。近年出荷頭数が減り、単独で銘柄を維持することが難しくなっていた。
 追い打ちを掛けたのが原発事故だ。銘柄の統一に踏み切った理由について、関係者は「風評被害など事故の影響が大きい」と口をそろえる。
 仙台市中央卸売市場食肉市場では、A5等級の和牛の平均落札価格が一時、震災前の7割の水準に下落した。福島県内で繁殖農家の廃業が相次いぎ、最近は子牛価格が従来の3割高。餌の飼料も値上がりした。
 経営環境が厳しさを増す中、生産者同士が話し合いを重ねていた銘柄統一の具体化が、1年ほど前から一気に進んだという。
 石越牛の肥育農家16人でつくる石越町肥育牛組合組合長の金野康さん(54)は「今の状態では利益が上がらず、規模拡大も困難。数年後に銘柄を維持できなくなるのは目に見えている。若い農家のためにも、やむを得ない選択だった」と話す。
 現在の仙台牛生産の中心を担う、みやぎ登米農協の肉牛部会会長の佐々木清信さん(66)は「銘柄統一は長年の悲願。経営難や後継者不足に直面しているのは仙台牛の肥育農家も同じ。銘柄統一は、生き残りを懸けた新たな戦いの始まりだ」と語った。

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