洗濯機などの「白物家電」に高級化の波が押し寄せている。ここ数年、家電ベンチャーが機能を追求したシンプルデザインの製品を高価格展開したことで市場が形成され、大手が追随したのがきっかけだ。家電大手は、総合電機メーカーとして培ってきたモノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)などの技術を生かすことで、白物家電とネットを組み合わせた新サービスを模索し、家電ベンチャーと差別化しようとしている。
利益率高める思惑
日立製作所子会社の日立アプライアンスとシャープが11月から発売するドラム式洗濯乾燥機は想定価格が税別で30万円を超える。三菱電機のコードレススティック掃除機は同8万3000円前後と各社が高価格帯の製品を相次ぎ投入し始めた。新製品を買う場合、「洗濯乾燥機で20万円、掃除機で5万円」という目安は薄れてきた。
背景には、英ダイソンに加え日本のバルミューダ、アマダナなどの家電ベンチャーが独創性のある掃除機や扇風機、トースターなどを開発し「これまでではあり得ない高価格」(大手家電関係者)で展開、ヒットしたことがある。消費者が高価格でも受け入れる土壌ができたことで、家電大手が追随する形で高価格帯製品を増やした。加えて、各社の業績が回復したことも大きい。2018年3月期連結決算の営業利益は、日立製作所、三菱電機が過去最高。シャープは4年ぶりに最終黒字に転換した。業績回復を機に思い切った製品展開で「薄利多売」とされてきた白物家電の利益率を上げようとの思惑も透けてみえる。
IoTやAI活用
こうした中、注目されるのが、IoTやAIの活用だ。日立、シャープは今回、ネット上に情報を蓄積するクラウドやスマートフォンとの連動を打ち出した。これまでのように家電を売って終わりではなく、購入後にネットを使った課金サービスを継続すればビジネスが広がり、家電ベンチャーとも差別化できる。シャープは既に自社の調理家電「ヘルシオ」向けの食品宅配サービスを昨年10月に始めた。洗濯機も、「洗剤がなくなった際に配達したり、汚れが落ちやすい洗い方を有料で指南したりすることを考えたい」(桧垣整メジャーアプライアンス事業部長)という。
白物家電をめぐる顧客争奪戦は激化しそうだ。(飯田耕司)