皮が食べられるブドウ「シャインマスカット」活況

ブドウ「シャインマスカット」の産地が活況だ。芳香のある甘さや、種がなく皮ごと食べられる特性が消費者の心をつかんで人気が沸騰。2006年の品種登録以来、全国で栽培が急増して主力品種に成長した。今や、海外バイヤーが産地に直接取引を持ちかけるほど人気が“世界規模”に拡大した。貯蔵性が良く、出荷ピークを過ぎる秋から冬の長期出荷もでき、農業者の収益アップを後押ししている。

産地は生産拡大 展示会でもバイヤー殺到

 千葉市で10月に開かれた展示会「日本の食品 輸出EXPO」。試食コーナーに海外バイヤーが群がっていた。お目当ては岡山、長野産シャインマスカット。ロシアのバイヤーは「地元の高級すしレストランでデザートに出したい。他のブドウが酸っぱく感じる」と目を見張る。その日、コーナーの人垣は終始途切れることがなかった。

大ヒットを追い風に、産地は生産振興に力を入れる。主力産地の山梨県JAフルーツ山梨は「出荷量、単価とも毎年2割ずつ伸びている」(販売部)と威勢がいい。今年の共選出荷は10月21日時点で約1300トンと、前年比3割増。出荷増にもかかわらず、1キロ単価は約200円も高い。「もうかる品種として他品種から切り替える農家も多い」(同)と、生産拡大を進めている。

JAは、食味を重視した高品質生産と、1粒20グラムの大粒に仕上げ高い評価を得た。市場出荷のため海外との直接取引はないが「外国から、何千房買いたいという話もある」など、常に品が足りない状態だ。

長野県の主産地、JAながのは今期、8月の低温と長雨、日照不足で小ぶり傾向となったが、価格は前年を上回り「想定以上の高値」という。担当者は「シャインマスカットは全国的に注目され、輸出の引き合いも後押しして堅調」と手応えをつかんでいる。

「シャインマスカット」は農研機構が育成し、2006年に品種登録された。農水省によると、14年の栽培面積は約680ヘクタールで、5年前の4倍以上に増えた。

近年では従来の出荷ピークを過ぎる10月以降の販売に向け、収穫期延長技術や長期貯蔵技術も開発され、ギフト向けなどで需要が増える冬の出荷に期待が集まっている。

農水省によると、シャインマスカットを含むブドウの輸出額は大きく伸びている。主な輸出先は香港、台湾。16年の輸出額は約23億円で12年と比べ5倍ほど伸び、輸出量は1000トン以上(12年比約3倍)となった。

入荷増えても単価はキープ

 青果物情報センターによると、東京都中央卸売市場に入荷したシャインマスカットの10月下旬の取引価格は1キロ1558円。9~10月中旬は入荷量が前年並みから3割増で推移しつつ、価格も1割高程度で堅調に推移した。「巨峰」「ピオーネ」など別の主力品種より2倍の高値で取引されている。

入荷量が増えれば単価は下がるのが“常識”だが、シャインマスカットは異なる値動きを見せる。大手卸の東京青果によると、市場への入荷量が全国的に増える中も、輸出向けの注文が増えて引き合いが強まり、前年並みの単価をキープしている状況だ。

輸出は3、4年前から台湾や香港など東南アジア向けに広がってきた。「海外では日本の高品質が好評で、大粒、大玉を好む傾向がある」(同社)として国内消費に加え、生産者の手取り増に向けて海外にも売り込む考えだ。(隅内曜子)

タイトルとURLをコピーしました