宮城県内の農業関係者らが東北生まれの調理用トマト「すずこま」のブランド化を目指している。3月中旬に大崎市内でハウス栽培をスタートし、津波被害を受けた沿岸部にも作付けを広げ、今夏には東京の飲食店でパスタなどの食材として提供する予定。栽培管理のIT(情報技術)化も図る計画で、関係者は「被災地の農業復興を後押ししたい」としている。
すずこまは東北農業研究センター(盛岡市)などが昨年10月に発表した新品種で、背丈が低く栽培に手間と経費がかからないのが特徴。現在は全国農業協同組合連合会が神奈川県内で試験栽培する程度にとどまる。
ブランド化に取り組むのは、県内の農業関係者や研究者による有志団体「未来農業同人G11」(木村吉博代表)。大崎市での栽培は、G11が農研センターなどから譲り受けた250株を、地元の農業関連法人「アグリフューチャー」に無償提供して始めた。
沿岸部でのハウス栽培に向けては、G11が生産者を回って生産を働きかけている。栽培管理のIT化は、東北大農学部の研究者らでつくる東北スマートアグリカルチャー研究会(仙台市)が支援する。
G11はまず大崎市で収穫したトマトを全て買い取り、協力企業が今夏オープンする東京の飲食店で提供する。3月15日にはすずこまを使ったパスタや煮込み料理などの試食会を仙台市内で開き、市場関係者に食材としての魅力をアピールした。
木村代表は「まだ競合産地はなく、国内での消費量が増えれば新しい東北のブランド品になる。栽培農家を増やし、消費拡大にも力を入れていきたい」と話す。