漁業被害をもたらす厄介者の大型クラゲ(エチゼンクラゲ)の確認が東北で相次いでいる。19日に本年度初の出現報告が青森県深浦町であり、その後、秋田県でも確認が発表された。津軽海峡を回り込んだとみられ、27日には初めて太平洋側(青森県八戸市)で確認が報告された。専門家は、津軽暖流の影響で「三陸沖に南下する恐れがある」と指摘する。
(青森総局・鶴巻幸宏)
[エチゼンクラゲ]成長すると、かさの直径は2メートル、重さ150キロになる世界最大級の大型クラゲ。福井県沖で捕れたことから、福井の旧国名の越前にちなんで名付けられた。体の大部分は水分。触手に毒があるが、食用は可能。
漁業情報サービスセンター(JAFIC、東京)によると、秋田県の男鹿、にかほ両市で16~18日に各1~3匹、18、19日に深浦町の北金ケ沢近海で1~3匹、26、27日には八戸市沖で6~12匹を確認。かさの直径はそれぞれ20~100センチある。
青森県産業技術センター水産総合研究所(水総研)によると、東シナ海で出現するエチゼンクラゲは日本海側の対馬暖流の流れに沿って津軽海峡にたどりつき、南下する津軽暖流で太平洋側に達する。
今年は7月以降、長崎県の対馬沖で大量出現し、2009年度以来15年ぶりの水準という。青森県では同年度の漁業被害額が約20億円に達し、災害クラスの被害額となったが、近年はまとまった数の出現はない。
8月27日時点のJAFICの分布図によると、主な出現エリアは山陰地方で、東へと変遷しつつある。青森県内の漁協関係者は、潮の流れで大群が襲来しないか警戒する。
深浦町の北金ケ沢漁港の荷さばき施設で働く新深浦町漁協職員藤田怜央さん(27)は、09年に見た光景を思い出して言う。「海岸のそこら中に1メートル級の 同漁協は現地点で、群での来遊を確認していないが、西日本の状況を注視する藤田さんは「網に入ると売り物の魚が酸欠で死んでしまう」と定置網操業への影響を懸念する。
漁協幹部は「今はまだ騒ぐ段階ではないものの、もし増えてくるようなら対策を考えないといけない」と冷静に話す。
水総研によると、定置網で発見した場合、クラゲをかきだすだけでは不十分だ。出現海域で漁業被害の連鎖を防ぐために、クラゲのかさの表面を傷付け海中に沈めたり、専用の機械で粉砕したりする必要がある。
野呂恭成総括主幹研究専門員は「15年ぶりに南の海域で大量出現している。今後、東北にも多く流れ着く可能性があるので要注意だ。駆除の準備をしてほしい」と注意を呼びかける。