■国内大手、安全を優先/外資・中堅、コスト割安
■国内型…JISに申請し挽回狙う/外資型…震災後の需要増で主導権
蛍光灯からの代替が進む「直管型」と呼ばれる発光ダイオード(LED)照明をめぐり規格の対立が生じている。低価格な外資系・国内中堅メーカーが販売する規格と、割高ながら安全性の高さがPRポイントの国内大手電機メーカーの規格に、陣営が分かれているためだ。足元では外資・中堅陣営が優勢だが、国内大手電機陣営も業界団体と足並みをそろえてシェア拡大を狙う。両陣営の直管型の主役をかけた争いは過熱するばかりだ。
直管型LEDには大きく2つの規格がある。1つが蘭フィリップス、韓国サムスン電子など外資系やアイリスオーヤマなど中堅が採用する世界規格の「G13」。もう1つがパナソニックや東芝、三菱電機など国内大手が販売する国内専用規格「JEL801」だ。
G13は、照明を器具に挿入するための「口金」の形状が従来の蛍光灯と同じで、器具の交換が不要でコストが割安なのが特徴。ただ、直管型のLEDは、既設の蛍光灯などの照明器具には不適合という欧州照明器具工業会の指摘もあり、既設の口金にG13をそのまま付けた場合、部品不良で寿命が短くなったりするほか、最悪の場合、落下や接触不良により火花が出る問題なども報告されている。
一方、国内大手電機が掲げるJEL801は「専用の口金を使うため、誤挿入による事故を防げる」(パナソニック照明商品グループの井野川浩チームリーダー)という。口金の形状は片方がT字、もう一方がL字と、蛍光灯の器具とまったく違うため、器具丸ごとの工事抜きには挿入できない。このため値段はG13商品の2倍近くにもなる。
直管型LED市場は、東日本大震災後の省エネ意識の高まりからオフィスや工場などでの需要が急増し、平成23年に約600万本が販売された。市場の立ち上がり期にまず主導権を握ったのは、価格で圧倒したG13で、7割近くを占めたとの試算もある。
しかし、ここに来て風向きが変わってきた。大手電機などでつくる日本電球工業会が先月26日、JEL801への規格統一化を目指して、日本工業規格(JIS)に安全規格の取得を申請したからだ。来年4月にJIS規格として認められれば、官公庁や大手企業などを中心に売り込みやすくなる。
これまでに同工業会では安全性などに関する工業会の製品規格について、JEL801には付与したが、G13については、お墨付きを与えていない。
G13陣営はこれに対して「資格を持つ工事担当者が誤挿入がないように取り付け作業を行っており、一部の事故は粗悪品などの例外」と反論。実際、事故が起こりにくくするなどの安全対策を急いでいるが、主張は認められていないのが実情だ。
こうした中、JEL801陣営はJIS規格を武器に「一気に席巻したい」(大手電機幹部)と意気込む。業務用の蛍光灯は今後20年かけて直管型LEDに6億本が切り替わるとみられ、両陣営のつばぜり合いは激しさを増しそうだ。