政府は見知らぬ人が一緒に乗車して割り勘で運賃を支払う「相乗り型タクシー」を全国で解禁する検討に入った。事業者のアプリで目的地が同じ方向の利用者を組み合わせる予約制で、今よりも割安な価格でタクシーを利用できる。地方を中心に運転手不足が懸念される中で、低価格で効率的な移動手段を確保する狙い。導入ルールを定めた通達を整備し、2019年度中の実現を目指す。
7日開いた未来投資会議(議長・安倍晋三首相)で議論を開始した。首相は「利用者が低廉な料金で移動することを可能とする」と述べ、相乗り型タクシーの普及に向けた具体的な検討を指示した。国土交通省が詳細を詰める方向だ。
相乗り型タクシーは事前予約制で、タクシー会社のスマートフォンのアプリなどに利用希望者が行き先を入力すると、同じ方向に行きたい人と組み合わせて配車する仕組み。料金は乗車距離に応じた配分で決まり、キャッシュレスで決済する方法を想定している。複数の人が運賃を”割り勘”する形になるので、1人で乗る場合よりもそれぞれの料金は安くなる。
この方法を使って東京都内で民間事業者が2018年に実施した実証実験では帰宅や帰省で利用する人が最も多く、7割超の人が「また利用したい」と答えた。今より割安にタクシーを利用できるサービスが登場すれば、交通機関の競争に一石を投じそうだ。
相乗り型の解禁には、地方などで運転手不足が進む中で、限られたタクシーを有効に活用する狙いもある。人口減でバス路線の縮小が進む地域では、住民の移動手段を確保するために自治体がバスを運行する例もある。相乗り型タクシーが代替できる可能性がある。
7日の未来投資会議ではドローンの利用拡大策も検討した。22年度をめどに人がいる地域でもドローンを飛行できるようにする方向だ。陸上輸送が難しい地域への生活物品や医薬品の配送、インフラの点検、農地での農作物の確認などで利用を想定している。
政府は一般の人がお金をとって自家用車で目的地へと送る「自家用有償旅客運送」の見直しも検討する。これは過疎地など交通機能の維持に課題を抱える市町村に限定して認める仕組み。こうした車の管理業務を自治体などに加え、タクシー会社も容易に担えるようにする法整備を求める意見がある。今後、道路運送法などの見直しも視野に制度整備を議論する。