相次ぐバイトテロの炎上動画、撮影した人にも賠償責任はある?

相次ぐバカ動画の投稿。1月、「すき家」の従業員がインスタグラム上におふざけ動画を投稿し、大炎上したのは記憶に新しいが、そこから「くら寿司」「ファミリーマート」「セブンイレブン」「バーミヤン」など立て続けに問題視される動画が発見、拡散される事態へとなっている。

 特に「くら寿司」を運営する「くらコーポレーション」は、問題動画に関与したアルバイト従業員2名に対し、法的対応をとることを発表。損害賠償請求の可能性もでてきており、仲間内の悪ふざけでは済まない問題になっている。

◆撮影者も同じように賠償責任がある?

 一連の報道を見て思ったことは、問題行動自体はしていないものの、当該動画を撮影した人間にも賠償責任があるのか? ということ。炎上のきっかけとなった不適切行為をした従業員の責任は当然だが、撮影者側はどの程度の罰を受けるのか。それについて、グラディアトル法律事務所の森山珍弘弁護士に見解を聞いた。

「結論からいうと、撮影者側も当該不適切行為者と連帯して賠償責任を負います。民法719条1項前段において、『数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う』とされています。すなわち、今回のケースでは当該不適切行為、撮影、投稿までの一連の行為が、企業の利益を侵害する不法行為となりますので、その撮影を行った撮影者も、当該不適切行為者と共同の不法行為者として連帯して責任を負うことになります」

 上記のように、たとえ自らが不適切な行動をせずとも、連帯して責任を負う必要が法により定められているそうだ。

「上記で述べた理由から、従業員に損害賠償請求をすることは可能です」(森山弁護士)

 正社員等と比べ責任の割合が低いと見られがちなアルバイトであるが、社会問題へと発展している大きな問題を前にすれば、大人と同じように責任を取らなければならないのである。

◆損害賠償額は…

「くら寿司」が従業員2名に対し賠償請求措置を取ることは冒頭に述べたが、果たしてどのくらいの金額になることが予想されるのだろうか。報道によると、同店はこの動画がきっかけで株価が下落し、時価総額27億の損失が発生したと言われている。

「これは一概にいくらくらいとは言えませんね。損害の内容としては、下記のようなものが考えられますが、企業の規模・売上や状況・影響の度合いによって損害額は異なるからです」

①企業全体のイメージダウンに対する損害
②動画投稿の影響でキャンセルせざるを得なくなった広告
③宣伝費用・動画投稿後の対応として必要となった場合には、その店舗清掃費用
④廃棄された食材のコスト(当該食材だけではなく,動画投稿が原因で廃棄が必要となった分も)

「これらの損害内容を加味した上で金額が決まっていくと予想します」

 一般に、企業が打ち出す広告費は高額で、今回の件がきっかけでそれがキャンセル等されたとなった場合、相当な額の損失が出たことが予想される。また、企業全体のイメージダウンは相当なもので、「イメージダウン」に見合う損害賠償となると、眩暈を覚えてしまう。渦中の彼らは今頃、眩暈どころではないだろうが……。

◆悪質度によって対応はかわる

 前出の「くら寿司」が損害賠償請求措置を発表した報道は、テレビ、ネットでもかなり流れている。にも拘わらず、連日のように新たなバカ動画が出現していることは周知の事実。既に数多あるバイトテロだが、そういった中で「悪質度」の違いで法的措置の差はつくのだろうか?

「態様が違うにしろいずれも不適切な行為であり、その撮影・投稿までの一連の行為が、企業の利益を侵害する不法行為となります。ですので、悪質性の高低に大きな差はないと思われます。どのケースにおいても、損害賠償請求は可能でしょう」(森山弁護士)

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 たとえ軽い悪ふざけのつもりでも、取り返しのつかない事態へと発展してしまう昨今。「不適切な行為」と判断され、またそれによる「損害」が証明されてしまえば、金銭的な負担を強いる可能性も高いということだ。言わなくても分かるであろうことをあえて発言させてもらうが、SNSとの付き合い方を少しは考えるべきである。<取材・文/ロケット梅内>

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