看板モデルが生産終了! さらば、レガシィ・ツーリングワゴン!

10月31日付の読売新聞朝刊で、富士重工業(スバル)の看板車種「レガシィ」のツーリングワゴンが、2014年内に廃止されると報じられた。
レガシィの代名詞であり、かつては日本中にワゴンブームを巻き起こした先駆者であるツーリングワゴンが、カタログから消える?
その真偽を確かめるべくスバル広報部に問い合わせると、「当社からの発表ではありませんので、お答えできることはありません」との回答。しかし、生産終了を断固否定もしなかったわけで、どうやら今回の報道は確度が高そう。
レガシィは1989年に初代が発売され、ピーク時の96年度には9万台超の国内販売を誇った。しかし、12年度のそれはわずか2万4207台と低迷。そこでスバルは同車について、セダンの「B4」とSUVタイプの「アウトバック」のみを存続させ、ツーリングワゴンを廃止する決定を下したようなのだ。記事によれば、その販売苦戦の理由は、近年のワゴン人気の低迷にあるという。
だが、今年上半期のレガシィの国内総販売台数における各モデルの販売数比率は「ツーリングワゴンが60・9%、B4が23・1%、アウトバックが16・0%」(スバル広報部)で、依然としてツーリングワゴンがレガシィの稼ぎ頭である事実は変わらない。
そしてまた、ツーリングワゴンには、長年にわたる熱狂的なユーザーがいるのも特徴だ。
3代にわたってレガシィを乗り継いできた、あるカメラマンがその魅力を語る。
「普通のワゴン車はベースのセダンより車重が増える分、どうしても運動性能が悪くなる。でも、レガシィのツーリングワゴンは、加速にしても、ブレーキの利きにしても、B4と比べて遜色ないのがいい。それに仕事柄、荷室の広い車が必要なのですが、車高が高いと立体駐車場に入れられないことがある。でも、ツーリングワゴンなら、そんな心配は無用。ホント、頼りになる相棒って感じでした」
ここまでファンに愛される車が、なぜ消えようとしているのか?
自動車評論家の佐野弘宗氏が解説してくれた。
「売り上げの絶対数が落ち込んでいるのが大きいですね。かつてのワゴン車の購入層は、より搭乗人数の多いミニバンや、着座位置が高くて運転しやすいSUVに流れるか、あるいは年配者だと、“子供も独立したからコンパクトカーで十分”となってしまった」
それを裏づけるように、レガシィと同クラスでワゴン車を用意しているのは、今や国産車ではほかにトヨタ「マークX」や、マツダ「アテンザ」あたりがあるのみ。そして、この傾向は日本だけでなく、レガシィの大マーケットである北米でも同様だという。
「北米でも、ワゴン車のニーズは現在ほぼなくなっています。だから、スバルも現行レガシィについては、最初からツーリングワゴンを北米市場に導入せず、セダンのみに絞っている。そして、ワゴン車よりアウトドアテイストが強いアウトバックについては、レガシィの1モデルではなく独立した車名として販売し、現地で人気を博しています」(佐野氏)
だとしたら、先細り状態のツーリングワゴンが廃止されるのは、当然の成り行きなのかも……。
もちろん、スバルは長年育ててきたワゴンという孝行息子と完全に決別するわけではない。レガシィよりひと回り小さいスポーティなデザインの新型ワゴン「レヴォーグ」を14 年中に発売し、新たな需要を掘り起こす構えだ。
とはいえ、日本の自動車史に確かな足跡を残した名車の退場には、一抹の寂しさを感じずにはいられない。
お疲れさま、そして、さらば、レガシィ・ツーリングワゴン!

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