真備町「金田一募金」 「乱歩」から「スケキヨ」までが寄付を次々、大喜利状態に

西日本豪雨で特に大きな被害を受けた岡山県倉敷市の真備町は、かつて横溝正史が疎開し、「本陣殺人事件」を発表したことで知られる。

ファンにとっては一大「聖地」。その復興を願ってできた「金田一募金」が本名名義でなくても寄付ができるとした途端、名探偵はじめ「スケキヨ」「アガサ・クリスティ」など様々な寄付人が殺到、大喜利状態になっている。

名探偵のふるさと

真備町には、推理作家の横溝正史さんに由来する「横溝正史疎開宅」がある。倉敷市の公式観光サイトによると、横溝さんが家族と共にこの場所に疎開しており、その最中に「本陣殺人事件」といった金田一耕助シリーズが発表された。

また、「金田一耕助の小径」というウォーキングコースも整備されており、「八つ墓村」に登場する森美也子など作品に登場するキャラクター像も設置されている。そのほか、金田一耕助のコスプレイベントなどファンに向けたイベントも行われている。

「名探偵」の故郷のような場所であるが、「横溝正史疎開宅」は被害を免れたものの、豪雨によってイベント用の衣装や小道具を保管していた市の施設も浸水してしまったという。

そこで岡田まちづくり協議会外部会員で有志の川崎修さんは、2018年7月20日から「名探偵のふるさと募金(通称:金田一募金)」と題してツイッターで募金を呼び掛けた。

募金の透明性を確保するために、週に一度は川崎さんのツイッターアカウント(@osm4)で公開することにした。

特に変わった内容ではなかったが、ある条件によって募金の存在が広く知られるようになった。

「匿名・仮名での送金も可能です」

この条件に着目したツイッターユーザーから「横溝大喜利募金w」といった反応があった。

その後、川崎さんがツイッター上で、

「少額で遊びながら匿名募金してくださっても全然構いません」
「遊びの力が復興の力になります」

との声明を出したため、匿名を使った大喜利化が加速していった。

「つまらん本名で振り込んじゃった…も一回」

このコメントが出た時点で「怪獣男爵」と「金田一耕助」の名前がツイッターで公開された。更に、江戸川乱歩が1日に2度現れたほか、横溝さんから離れてアガサ・クリスティやシャーロックホームズなど海外ミステリー勢も募金に参加。京極夏彦さんの作品に因んで「薔薇十字探偵社」、有栖川有栖さんの学生アリスシリーズで知られる「英都大学推理小説研究会」といった団体名も加わった。

横溝作品と関係なくとも、一応は「名前」としての体裁があった中、いよいよ名前ではない匿名も出てきた。

「母さん僕だよ スケキヨだよ」
「克子死ス 金田一氏ヲヨコセ」
「よし分かった 等々力」

など台詞や作中の電報の内容で募金をする強者も現れた。

これらユニークかつ強烈な「匿名」は朝日新聞やNHKでも取り上げられた。

募金を実際にしたと思われる人はツイッターで、

「金田一募金、つまらん本名で振り込んじゃった… も一回、振り込もうかしら」
「通称・金田一募金、一度やったけど名乗りたい名前があるので日を開けてまたやろう」

など匿名の大喜利を楽しんでいる様子であった。

そのほかのユーザーからも「入金する側が面白がって、しかも効果がある募金って今まで聞いたことがないよ」といった反応も寄せられていた。

8月31日にまでに544人、約230万円が集まっていると公表した。

この募金は11月末まで行っている。これら寄付金は真備町の横溝正史・金田一耕助関連における被害の復興支援に使われる。また、市立真備図書館にあった横溝正史の書籍約800冊も浸水で読めなくなったといい、倉敷市に寄付金の一部を渡して書籍等の購入に充ててもらう予定もある。

寄付の送金先は「楽天銀行ホルン支店 普通口座1665613 カワサキ オサム」。

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