知ってる? 四十肩・五十肩と、肩凝りとの違い/四十肩・五十肩

40代を過ぎて、肩が痛い、腕が上がらないという時にまず思い浮かべるのが、四十肩・五十肩ではないでしょうか。「そのうち治るだろう」「年をとったから痛くなっただけ」と自分で判断し、放っておく人も多いですが、実は、いつ爆発するかわからない「爆弾」を抱えているのと同じ。気づかないうちに重症化していて、手術が必要となる場合もあるので、軽く考えるのは禁物です。
肩の仕組みをはじめ、四十肩・五十肩の原因や症状、予防法などを、麻生総合病院 スポーツ整形外科部長で、肩関節の治療を専門とする鈴木一秀先生にお聞きしました。

肩関節に大きな影響を及ぼす肩凝り
肩の痛みというと、四十肩・五十肩のほかに、肩凝りもよく知られている症状です。肩凝りがひどくなって痛みが現れたものが四十肩・五十肩だと思われることも多いですが、この2つは全くの別物です。
鈴木先生によると、「簡単にいえば、肩を動かせるのが肩凝り、動かせないのが四十肩・五十肩です」。

■肩凝り
【症状】体の表層で肩を支える筋肉(アウターマッスル)による血行不良や筋肉疲労によって起こる。
【痛み】あり
【肩と腕】動かせる

■四十肩・五十肩
【症状】肩の関節の周囲で起こる炎症によって起こる。
【痛み】あり
【肩と腕】動かせない、上げられない

とはいえ、両者の関係も全ては否定できません。多くの場合、四十肩・五十肩は肩の関節の負担が長期に渡って蓄積されることで炎症を引き起こしています。肩が凝るということは、姿勢が悪かったり、パソコンを使いすぎていたりして、肩に負担をかけていることになるからです。

特に、肩甲骨の動きが悪い人は肩凝りになりやすいと考えられています。肩周囲の筋肉は肩や腕を支えていますから、肩甲骨の動きが悪い状態が続くと肩の関節の動きにも大きな影響を及ぼします。

「特に注意したいのは、慢性的に肩凝りがある人」と、鈴木先生。このような人は、肩のこわばりや違和感、痛みなどの症状に慣れてしまっています。肩が痛くて腕が上がらなくなっても、「これはただの肩凝りだから」と勘違いをしたまま、医療機関を受診することが少なく、症状を悪化させるケースも多いそうです。

逆に、四十肩・五十肩を発症して腕が上がらない人が、肩凝りを訴えることも。肩の動きが悪くなると、首から肩、背中の上部にかけて広がっているアウターマッスルの僧帽筋(そうぼうきん)を無理に使って腕を上げようとし、肩凝りを感じるようになるのです。

肩凝りは多くの人が経験する症状です。厚生労働省が3年ごとに実施する「国民生活基礎調査」でも、体の悩みとして肩凝りは女性で第1位、男性で第2位という報告(平成28年)もあるほど。鈴木先生によると、「肩凝りくらいで医療機関を診察するのは気が引けるようで、放置する人がほとんどです」。まずは生活習慣や姿勢を改善し、あまりに症状がひどい場合には、医療機関を訪ねてみるといいでしょう。

取材・文/岡田知子(BLOOM)

<教えてくれた人>
鈴木一秀(すずき・かずひで)先生

麻生総合病院 スポーツ整形外科部長、医学博士。1990年、昭和大学医学部卒業。肩治療のスペシャリストとして、スポーツ整形外科、肩肘関節外科、関節鏡視下手術を専門分野とし、これまでに治療してきた患者数は6,000人を超える。日本肩関節学会代議員、日本整形外科スポーツ医学会代議員などのほか、早稲田大学ラグビー蹴球部のチームドクターも務める。著書に『「肩」に痛みを感じたら読む本』(幻冬舎メディアコンサルティング)。

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