知床観光船事故 東北の事業者「人ごとでない」 出港基準厳格化も

北海道・知床半島沖の観光船事故を受け、海上保安庁が点検に乗り出したり、事業者が出港基準を厳しくしたりする動きが東北で広がっている。各事業者に予約のキャンセルなどは入っていないが、書き入れ時の大型連休は目前。各事業者は事故発生を嘆きつつ「明日はわが身と受け止め、エラーがないよう努める」と気を引き締める。

運輸局と海保が臨時点検

 東北運輸局と宮城海上保安部は26日、日本三大渓の一つ「嵯峨渓」を巡る東松島観光物産公社(宮城県東松島市)の遊覧船に対する臨時安全点検を実施した。職員5人が脱出口の整備状況などを調べたほか、運航基準が適切かどうか確認。不備はなかった。

 運輸局の村林真悟首席運輸企画専門官は「知床の観光船は天候の悪化が予想された中で運航した。事業者は安全を最優先にしてほしい」と強調した。

 事業者側も緊張感をにじませる。北山崎断崖クルーズを手がける陸中たのはた(岩手県田野畑村)には(1)波高2・5メートル以上(2)風速15メートル以上(3)海上の見通し500メートル以下-のいずれかに該当すると欠航する規定があるが、29日の今季運航から風速を「10メートル以上」に厳格化する。正路隆弘船長は「事故は人ごとではない」と漏らす。

「やめる勇気必要」

 小名浜デイクルーズ(福島県いわき市)は事故翌日の24日朝、チケット売り場脇に2月に実施した大規模点検に関する案内文を掲示し、観光客への丁寧な説明に努める。事故で疑問視されている出港判断も天気図を見ながら毎朝相談するといい、熊谷章二取締役は「自然に合った対応が何より重要。(運航を)やめる勇気も必要だ」と力説した。

 船員らに毎朝行う37項目の点検の徹底を再度周知したのは網地島ライン(宮城県石巻市)。運航の可否については気象情報はもちろん、寄港先の漁協や漁師の見立てなどを基に判断するという。高橋健浩(たけはる)業務部長は「どの業者も多方面から情報収集するはず。(知床では)一体何が起きたのか」と驚きを隠さなかった。

 波高が2メートル以上ならば、予約があっても欠航にする基準を設ける仏ケ浦海上観光(青森県佐井村)は「これまで通り基準を守って運航する」方針。40年以上の運航実績がある元漁師の磯川博社長は事故について「あんな気象条件で海に出るなどあり得ない。誰が見てもむちゃな運航だ」と断じた。

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