知的財産権侵害で米が中国を提訴へ WTOに初めて

2007年04月10日11時15分

 米通商代表部(USTR)は9日、中国政府がDVDやCDなど米企業の知的財産権を十分に保護していないとして、世界貿易機関(WTO)に提訴する、と発表した。知的財産権をめぐって、中国がWTOに提訴されるのは初めて。

 映画や音楽、書籍などの輸入・流通規制も海賊版横行の原因になっているとして同時に提訴する。米国が中国をWTOへ提訴するのは、今回の2件を含め計5件。中国との貿易赤字が5年連続で過去最大を更新していることもあり、米産業界は中国の海賊版ビジネスに対する危機感を強めていた。

 この日記者会見したUSTRのシュワブ代表は、これまでの中国との協議に成果がなかったため、10日に提訴すると発表した。「著作権保護は米国にとって喫緊の問題。中国の国内法や規制、運用方法を改善し、保護を徹底してもらう」と強調。日本や欧州などが提訴に参加する可能性も明らかにした。

 米側が求めているのは、刑事罰の強化。中国の現行制度ではDVDやCDなどの違法コピー製品の場合、500枚未満の販売は懲役対象ではない。シュワブ代表は「多くの業者は摘発時に違法コピーを隠し、処分を免れている」と語った。

 模倣品を作っても流通・販売にかかわらなかったら、刑事責任を問われない現行制度の改善も要求。当局が差し押さえた海賊版が市場に出回っていることも問題視している。いずれもWTOの知的財産権(TRIPS)協定に違反している可能性があるという。

 一方、米側は海賊版対策として、映画、音楽、ビデオ、書籍、定期刊行物などの輸入条件を緩和することも求めた。現在は中国政府が承認した会社か政府系企業が輸入業務を一手に担っており、WTOのサービス貿易一般協定(GATS)違反の可能性があるという。

 WTOには、裁判所のような紛争解決制度がある。米中両国は近く正式に協議入りするが、60日以内に解決できない場合は、米国は「一審」に当たる小委員会(パネル)の設置をWTOに要請する。パネルの判断に不満がある場合は、どちらの国も「二審」にあたる上級委に申し立てることができる。

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