石巻の「伝承館」発信方法探る 「大川小」などと連携強化へ

 国や宮城県が石巻市の石巻南浜津波復興祈念公園で運営する「みやぎ東日本大震災津波伝承館」は、来月6日で開館から半年を迎える。これまでの5カ月間で約2万3000人が来館。被災3県が運営する震災伝承拠点では最小規模で、一部からは「物足りない」との感想も。関係者は運営を見直すなどよりよい拠点づくりを模索している。(報道部・柴崎吉敬)

震災遺構「大川小」を訪れた後、震災津波伝承館を見学したバスツアーの参加者=10月24日、石巻市

 「厳しい意見もあるが、未来のためになる施設を目指そう」「災害が頻発する中、公園全体で何を学べるのか発信すべきだ」

 10月中旬、復興祈念公園参加型運営協議会の伝承部会。公園に関わる市民団体や国、県担当者らが盛んに意見を出し合った。

 伝承館は元々、式典会場としての利用を見込んで設計された。展示面積765平方メートルは岩手県施設(陸前高田市)の3分の2、福島県施設(双葉町)の半分以下。被災状況や津波の歴史を伝えるパネル、語り部らが登場する映像があるものの、来館者から「津波の怖さが伝わらない」との声も上がっていた。

 「駐車場から遠い」など来館者の指摘を踏まえ、運営側は当初閉鎖されていた伝承館前のロータリーを使えるよう見直した。被災者の動画モニターの近くには登場人物や概要をまとめたポップを設けた。

 7月には伝承部会などの企画で、県内の語り部による月2回の定期講話が始まった。被災者の講話を基に震災を追体験するイベントなど、「人」を生かす取り組みが広がっている。

 来館者の足を他の被災地に向ける「ゲートウエー」の役割も期待される。県は伝承館と別の伝承施設をセットで巡ってもらう試みも始めた。

 10月下旬の仙台市発着のバスツアーには約20人が参加し、児童ら84人が犠牲となった同市の震災遺構「大川小」で遺族の話に耳を傾けた。伝承館を案内した男性解説員は「ここで全てが完結する施設ではない。物足りない印象を受けたら他の被災地も訪れてほしい」と呼び掛けた。

 県は参加型運営協議会の議論も念頭に、近隣の伝承施設や県内の伝承団体と連携をさらに強める考えだ。

 伝承部会長を務める公益社団法人「3・11みらいサポート」(石巻市)の中川政治専務理事は「公園全体の在り方に官民が同じ目の高さで意見を出し合い、腰を据えて最大被災地だからこそできる伝承の形を考えたい」と強調する。

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