東日本大震災から11年。教訓を語り継ぐ重要性が高まる中、県議会2月定例会では、昨年6月に開館した「みやぎ東日本大震災津波伝承館」(石巻市)の改善を求める声が与野党から相次いだ。
「創意工夫も発信力もない」。一般質問でこう断じたのは、地元選出の本木忠一氏(自民党・県民会議)。展示スペースの狭さなどを挙げ、「追悼、鎮魂、記録、教訓伝承そして防災の拠点だと自信を持って言えるのか」と疑問を投げ掛けた。
同じく地元選出の三浦一敏氏(共産党県議団)は(1)展示空間を十分活用できていない(2)飲食できる休憩施設がない(3)駐車場が遠い―といった問題点を指摘。展示運営業務を外部委託する県は「(建設した)国と課題を共有する」と繰り返す苦しい答弁に終始した。
伝承館は元々、石巻南浜津波復興祈念公園の式典会場として設計が進められ、展示内容はほぼ議論されてこなかった。議員は「県の目指すコンセプトが欠けていた」と口をそろえる。
事あるごとに比較されるのが陸前高田市に2019年開館した岩手県直営の津波伝承館だ。約1・5倍の面積に被災車両なども置いた質と量に加え、道の駅を併設して交流人口の拡大を図る。宮城県のそれとは趣が全く異なる。
もっとも、伝承館は「どちらがすごいとかではない」(自民議員)。宮城では開館直前の昨年2月から、官民の伝承部会で議論を重ね、語り部活動やバスツアーも始まった。伸びしろはある。
村井嘉浩知事も「議会でいろいろ言われたことは確かにその通り」と認める。他の被災地へといざなう玄関口としての機能を高めるためにも、県が主体的に役割を果たしてほしい。
(報道部・高橋一樹)